第六話 危機一髪
「とうっ!」
豚の頭を蹴って宙に舞う。剥き出しの下半身がとてもスースーする。僕のロンギヌスは無くなったのは悲しいけど、今だけは邪魔なモノが無くて助かる。取り敢えず、何はともあれ、早くここを出て下着をつけたい。
鎧兜に下半身丸出しで豚の上を跳んでいる。頭がおかしくなりそうだ。夢の中いや悪夢そのものだ。絶対人には特に知り合いには見られたくない……
「どわっ!」
僕は急に足を引っ張られ地面に叩きつけられる。即座に立ち上がるが、豚達が地面をふごふご嗅ぎながら群がってくる。そうか、豚は鼻がいいんだ。なんか僕が臭いみたいで嫌だな。
あと少しで逃げられそうなのに、通路の前に一回りでかい豚が立っている。他の豚は四つんばいかヨロヨロなのに。こいつは何なんだ? 目は閉じて見えて無さそうなのに。堂々としている。
でかい豚が僕の方に駆けてくる。もしかして、こいつ、目が見えてるのか? いや、目は閉じている。多分スキルだろう、心眼とかその手の。豚のくせに生意気だな。
僕はでかい豚を避けるように大回りで、豚八艘飛びを再開する。でかい豚は他の豚をぶっとばしながら近づいてくる。デカいのに素早い。
やばい、このままでは追いつかれる!
僕は足下の豚を強く蹴って上空に逃れ停止する。
「フゴッ! フゴッ! フゴッ!」
でかい豚は僕に向けて、他の豚を掴んで投げつけてくる。幾つかはかわせたが、今の体では上手く避けられず、一体の豚が僕に命中する。集中が切れてスキルが解けて地面に墜落する。
「ああっ!」
落ちた所に駆け寄って来たデカい豚に足首を掴まれ振り回される。そして投げられ壁に激突する。背中に激痛が走る。幸か不幸かこの体は思ったより頑丈らしい。
「うう、痛っ!」
立ち上がろうとするが、足が動かない。捻ったみたいだ。兜を調整して見ると、出口のすぐそばだ。けど、立ち上がれない。ちょっとした擦り傷が消えていってるので、元々もってたスキルのオートヒールは発動しているみたいだが、足が治癒するにはすこし時間がかかりそうだ。
「フゴフゴ、フゴフゴッ!」
豚共が匂いを嗅ぎながら近づいてくる。気持ち悪い。一気に鳥肌が立つ。いかん、このままだったら、エッチな本みたいな末路を迎えてしまう。下半身丸出しだし……
「グラビティ・ゼロ」
僕は重力をゼロにして、手の力で浮き上がる。けど、豚をかき分け走り寄ってきた、でかい豚に掴まれる。
「あうっ!」
でかい豚は僕を地面に叩きつけると僕の両肩を掴んで持ち上げる。激痛で息が止まる。まだだ、諦め無い。僕は生きて帰って英雄になるんだ! 考えろ、逃げる方法を!
「ボーナスゾーン、ゲットだな!」
よく通る女性の声がする。僕は兜がずれて何も見えない。
「焼豚にしてやるわ!」
甲高い女性の声が聞こえる。
何が起こってるのか? 強く握られていた肩が解放され、僕は地面に落とされる。
兜をずらし視界を確保すると、豚達にとっての地獄絵図が繰り広げられていた。
「くったばれーっ!」
槍を持った白色の鎧の騎士が次々に豚共を突き殺していく。
「ファイヤー・ボール」
白いローブの小柄な女性が次々と火の玉を杖から出して、焼豚をつくっている。
あと、無言でゴーレムのようなごつい黒い鎧の騎士が黒い大剣で豚共を肉片にしている。
助かったのか? けど、この三人強すぎるだろ。悪い奴らじゃなければいいが。
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