第十一話 聖女の癒し
僕はアナたち三人を背に走り出した。
僕は全く戦いの役にはたたない。居ても足を引っ張るだけだ。アナたちは強い。僕がいない方が戦いやすいはず。
逃げる訳じゃない。助けを呼びに行くんだ。
僕は自分にそう言い聞かせる。
けど、果たしてそうだろうか? 冷静に考えてみる。
あのミノタウロスは強い。強すぎる。僕が助けを呼びに行く間、あの三人は持ちこたえられるだろうか?
否だ。多分助けを呼びに行く間に、三3人は命を散らしているだろう。
それに、助けを呼びに行っても、誰がこのミノタウロスを倒す事が出来るだろうか?
否だ、多分、この3人がこの町で一番強い。誰を連れてきても軽く蹂躙されるだけだろう。
駄目だ! 逃げちゃ駄目だ。逃げたら、間違いなくアナたちは死んでしまう。
僕だけ逃げればいいのでは?
僕を助けてくれた三人を見殺しにするわけにはいかない。もし見殺しにしたら、僕は一生後悔するだろう。
嫌だ。嫌だ。嫌だ!
「ウァアアアアアーーーーッ!!」
僕は叫ぶ!
上手くいかない事を嘆き……
自分の無力さを嘆き……
自分の心の弱さを嘆き……
そして、心の奥底から何かを呼び起こすため!!
何をやってる僕は……
僕には力がある癒しの力が!
無力じゃない! 逆に無限だ!!
癒して癒して癒しまくってやる。
自分の守りたいものを!!!
僕は身を翻し、戦地へ向かう。
間に合わなかった……
ザシュッ!!!
ミノタウロスの巨大な斧が、アナの受けた剣をへし折り、肩口から心臓に届くくらいめり込む。
時がゆっくと流れ、そのアナの後ろ姿を見ながら立ち尽くしてしまう。
アナの体から鮮血が舞い散り、その体が僕の方に飛んでくる。ミノタウロスが蹴って斧を抜いたのだろう。
「グラビィティ・ゼロ!!」
僕はアナを抱き寄せる。
終わってない!
ここからだ!!
これからが始まりだ!!
ヴァンパイアに刺された青年のことを思い出す。
瀕死であること。条件その1。
強い思いを持ってる事。条件その2。
僕が、すべてをかけて癒す事。条件その3。
多分、全ての条件が揃ったはず。
「オーバーブースト!!タッチヒール!インフィニティ!!!」
僕は自分の全てを癒しの力に込める。白い光が溢れ出て、アナを包み込み、白い光の柱が天をつく!!
『こんな所で死んでたまるか!!』
『戦神降臨が使えれば!!』
『もっともっと、強ければ……』
『もっともっと、おっぱいが大きければ!!』
アナの声が僕の頭の中にこだまする。
みるみる傷が癒えて、アナは立ち上がる。
「オオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
アナは叫ぶ! この時、変態超人の2人目が誕生した!!
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