第九話 ささやかな抵抗
僕は力の限り走り、両足を前に投げ出す。
間に合え!
ガキーン!!
大きな乾いた音を立てて、なんとかサリーを逸れた巨大な斧が深々と大地に埋まる。
ギリギリ僕の渾身のドロップキックが間に合った。
「キヤッ!」
その轟音で気が付いたサリーが悲鳴を上げる。サリーを即座に抱え重力操作で後ろに飛び、ミノタウロスと距離を取る。
「サリー魔法は?」
着地して、サリーを地に横たえる。
「すっからかんよー。どうも足折れてるみたい」
サリーの右足が大きく腫れてる。これでは戦うのは難しいだろう。今すぐ治療したいところだけど、その時間はなさそうだ。
ミノタウロスは、斧を大地から軽々と引き抜き、僕の方に走ってくる。デカイのに速い。正直逃げたくなる。
「サリー少しでも逃げろ! 時間を稼ぐ!!」
僕は何も勝算はないが、サリーから引き離すためにミノタウロスへ向かって走る。
「グォォオォォォオーー!」
ミノタウロスは斧を振り上げる。
「グラビィティ・ゼロ」
今の僕にはこれしかない。完全に重力を遮断した僕は、今は空中に浮いてる羽毛のようなものだ。
斧の風圧で横に流れ避ける。
次の横なぎの一撃も僕に当たるが、ほぼすべての衝撃を流しているので、派手には吹っ飛ぶが、見た目よりダメージは無い。
この体にも慣れてきたので、このような事も出来るようになった。けど、ただただ、ぶりんぶりん揺れまくる胸が痛い。
吹っ飛ばされた瞬間に重力操作しながら駆け寄り、またふっとばされる。
牛ヤローは、怒り狂い僕に容赦なく斬撃を浴びせ続ける。
今のところ上手くいき、なんとか軽い怪我だけではすんでいる。
ああ、こいつが牛並みの頭でよかった。
けど、このままではジリ貧だ。少しづつオートヒールによる回復より、ダメージの方が多くなってくる。あと、多少は切られてるので、徐々に僕の服が無くなっていく。
悲しいけど、今の僕には全く攻撃手段が無い。出来る事は、他の三人に気が向かないように、ただやられ続けるしかない。
時間稼ぎしてる間に、町の警備兵とかが来てくれないだろうか?
それか、3人の誰かが復活しないだろうか?
細心の注意力で、戦いと言うよりも一方的にやられ続ける。少しでもしくじると、即致命傷だ。
ふっとばされる。
近づく。
ふっとばされる。
近づく。
今や僕は、ほぼ下着同然で、全身切り傷だらけだ……
永遠のように長く長く感じたその攻防も、突然に終わりを告げる。
力配分をたった少し間違ったために、ミノタウロスのでたらめな一撃が、僕の足を捉えた。
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