黒竜
「とりあえず逃げるわよ」
サリーの声が聞こえるが、姿は見えない。いや、見る余裕がない。ウシオが岩山を駆け下りてるんだけど、めっちゃ怖い。自分で飛んだり跳ねたりする分にはそこまでないけど、人に抱っこされてのそれは、不意の浮遊感や着地の衝撃でゾクゾクする。ついついウシオにしがみついてしまう。
岩山を駆け下り、ウシオが僕を地面に降ろす。さっきの魔封じ効果はもうそろそろ解ける頃。
「グゥアアアアアアーーーーッ!」
竜が天に向かって吠える。体がビリビリする。なんつー声量だ。
「マリーちゃん! グラビティ・ゼロ!」
サリーの声がする。なんだ?
「グラビティ・ゼロ」
シェイドも。ドラゴンにしかけるのか?
「うがっ。ぐぐぐっ」
なんだ? 全身に痛みが……
ポポポポー、シャン、シャン、シャーーーーン♪
謎楽器の音が響く。この音程は、ゲームとかで仲間を復活させた時の音楽をもじってるな。
「おお、勇者よ。死んでしまうとは情けない。このおけらミジンコダンゴムシの便所コオロギスイカバスト娘め恥を知って恥じらいまくれ」
棺桶から身を起こすと目の前には濃い顔イケメン。とりあえずぶん殴る。うるせーよ。
「熱いーっ。熱いーっ。お主はお主の聖気の恐ろしさを一端は自分で体験するのである。ここで言う聖気とは、ホーリーな気の事で、セクシャルな器の方ではないからな」
立ち上がってもう一発くれてやろうとするが軽くかわされる。ちっ。
「黙れ! こっちはイライラしてんだよ。お前が居るって事はここは最上階かよ。で、お前、わかるか? 僕がなんで死んだか?」
「そりゃわかるにきまっておるだろう。圧死である。圧死。超重力で一瞬で潰れたのであろうな」
超重力? ドラゴンにやられたのか。あ、サリーとシェイドが重力カットしてたのはそういう事か。けど良かった。もしものために僕が稼いだお金は自動的にウシオに割り振るように設定してたから死んで所持金が半分になっても金銭的には問題ない。まあ、ウシオの事だからそう簡単に死んだりはしないだろう。今もここに居るのは僕だけだからサリーもシェイドも無事なんだろう。あ、そう言えば。
「お前、今、蘇生は順番待ちなんじゃないのか?」
「そこは心配しなくてもいいのであるよ。街の神殿で迷宮の住民は復活させていて、一般冒険者はここである。二ラインあるから問題ないのである。であるが、私の上司はコネで横入りしたのであるよ」
上司ってロザリーか。なんかコイツとロザリーの間にはわだかまりがありそうだな。ま、ロザリーのブラック上司ぶりから当然だけどね。ロザリー、僕らに会うために頑張ったんだな。友達居ないんだろな。
「ほらほら、用事が終わったなら、早く出てくのであるよ」
「わかったよ。二度と来てたまるか!」
神殿を出ようとして考える。ここから一人で出たら、すぐにまた死んで戻ってくる事になるのでは?
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