謎ようかん
「「いただきます!」」
ダイニングのテーブルで僕らは手を合わせる。テーブルの上には切り分けた羊羹。だけど誰も手をつけない。そりゃそうだ。寝室のベッドの宝箱から出てきた羊羹が普通な訳ない。食べれば何かが起こる。罠とわかっていて踏むのは勇気がいる。けどおかしい、いつもならウシオが問答無用で先陣切るのに。
「もしかして、ウシオって甘いもの苦手なのか」
「はい、多少。ですが、たかだかこれくらい食べてもみせます」
「あたしも、羊羹くらいなんって事ないわ」
「ちょっと、まて、これは僕から食べる。多分食べたら何かが起こる。もし、戦闘とかだったらウシオとサリーが対応してくれた方がいい」
自分でも何言ってんだろうかと思う。羊羹食べたら戦いになる? そんな訳はないだろう。一応用心にこした事はない。ここでは何が起こるのか全く予想つかない。多分精霊女王が思いつきで色んな企画を盛り込んだからだろう。他人の思いつきを予測するなんて、乱数を予測するようなものでほぼ無理だ。
かぷっ。
フォークで羊羹を刺して噛みつく。羊羹食べるのにこんなに凝視されるのは初めてだ。それにそもそも、ロココ調のダイニングルームで羊羹はないだろ。せめてケーキかマカロンにしろよ。
羊羹をよく噛む。ようかんでたべるって書いてあったから一応だ。それもトリガーの可能性あるからな。
「うっ……」
僕は胸を押さえる。相変わらずデケーな。
「大丈夫? マリーちゃん!」
「ご主人様!」
みんなが駆け寄ってくる。
「うっ、うまいっ!」
「何よ。人騒がせね。今どきそんなボケする人いないわよ」
いや、昭和リバイバル。一週回って新しいはず。
けど、正直羊羹を舐めていた。子供の頃に食べた記憶があるが、最近は口にしてない。まじ美味い。濃厚なのに上品な甘さに口当たりがいい。これ絶対にクソ高いやつだ。お歳暮やお中元で貰うようなもの。多分、前に炎上した某有名店の羊羹だ。
「サリー。お茶。緑茶の濃いやつだ」
「あ、うん」
さすがサリー。しばらくでお茶が並ぶ。
「この羊羹は、とってもいいものだ。多分この世界で最高峰。しっかり味わって欲しい」
この世界にも羊羹はあるにはあるんだが、異国のもので、美味くなさそうなのにクソ高いから興味すらもった事がない。
僕らは濃いお茶と羊羹を楽しむ。みんな黙って食べる。そう、美味いものは静寂を生むんだ。温かい静寂を。グルメ番組じゃ無い限り、食べながらわざわざ喋る人はいない。うん、まじ美味い。もうちょっと欲しいな。おお、ウシオも完食してる。お茶と羊羹のマリアージュは強力だもんな。
「ねぇマリーちゃん」
「どした?」
「食べて終わりなの?」
そうだよな。何も起こんなかったよ。ちょっと幸せになれただけだ。
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