月下の舞踊
天窓から差し込む月の光。厳かに流れるピアノの旋律。それに合わせて踊る天使と濃い顔のタキシード男。
僕らは今何を見せられてんだ?
「おい、踊ってないでさっさと次へ案内しろ!」
エビシは踊りながら歌うかのように話し始める。生意気な事にイケボだなー。
「まてまて、心にゆとりは必要だぞ。いつもの散歩道、ゆっくり歩くと道端に咲く小さな花に気がつく事もある。特に私が好きな花は『おおいぬのふぐり』。『いぬのふぐり』じゃなくて、『おおいぬのふぐり』の方だぞ。ふぐりは大きい方が素晴らしいからな。ちなみになぜ『いぬのふぐり』っていうかというと、その実が犬のきゃんたまに似てるからである。であるから、その花を摘んで可憐な乙女に差し出し、その名前を問う事を考えるだけで、ワクワクするであろう。そういう心の余裕……」
「セイクリッドハンド!!」
僕の伸ばした手から、大きな光る白い手が飛んでいく。タッチヒールに数十倍のマナを込め飛ばしたものだ。踊るエビシに光る手が触れたとこで、僕の手を握る。
「浄化っ!」
「あべしっ!」
白い手に握られエビシが消滅し、癒しのエネルギーの塊である白い手が霧散する。
「マリー、案内はどうするのー?」
踊りながらエルエルが聞いてくる。うん、どうしよう? イラッとしてついやっちまった。たまにはなんか良いこと言うのかと見せかけて、ふぐりふぐり言いやがって、ウシオは下ネタ嫌いだし、サリーも好きじゃないし、シェイドの教育に悪い。
「マリーちゃん。大丈夫よ。あんなのに頼らなくても、あたしたちで探せば見つかるわよ」
「そうだな。ロザリーの拠点だったらしいからそんなにはひねくれてないだろう」
ピアノが演奏を止め、エルエルが降りてくる。
「じゃ、私は帰るわね。こう見えても忙しいのよ」
「じゃ、踊ってないで早く帰れよ」
「じゃ、またねー。がんばってねー」
フヨフヨ浮いて巣に帰って行った。またねーって言ってたけど、また邪魔しにくるつもりなのか? 正直もう会いたくない。あいつ、強いからこっちの言う事聞かせられないから、かき回されるもんな。
「とりあえず、色々回ってみない?」
「そうだな」
うろうろしてみると、僕たちが今いるのは結構大きい洋館で、回りは西洋の墓石に囲まれている。二階建てで一階にはリビングやダイニング、二階には寝室とか書庫とかがあった。全体的に装飾が多く、少し質素なベルサイユ宮殿って感じだ。墓に囲まれてるって事は、やっぱりゾンビホラーする予定だったのだろう。どうでもいいけど、なんでゾンビホラーの舞台って洋館が多いんだろう。他には荒廃した都市も多いなー。
囲んでる沢山の墓の隣に小高い丘があって、そこには教会がある。多分あそこになんかあるんだろう。




