月の光
「ああーっ。良い気持ーっ」
部屋の中でエルエルが立ち上がる。
「んー、なんて言うか、一週間ぶりに水浴びしたような気分ねー」
「おいおい、きたねーな。毎日体洗えよ」
「毎日綺麗にしてるわよ。例えよ例え」
女の子なのに例えがきたねーんだよ。まあ、けど、冒険者は一週間風呂入れないとかよくある事だけど。まあ、僕らにはシェイドの部屋があるから、いつでも風呂には入れるから今は無縁の話だけど。
部屋の中は大部屋で正面には階段。吹き抜けの天井でガラス細工をふんだんにあしらったシャンデリアがぶら下がっている。シャンデリアから幾つかの蠟燭の光が照らしてる。薄暗い。天窓からは月の光が差し込んでいる。床にはフカフカな絨毯。僕らが通った扉の隣には大きな装飾過多な観音開きの扉。なんて言うかあれだ。貴族とかがダンス踊るような部屋だ。隅にはピアノっぽいものもある。
「あーあ、誰も居なくなってるじゃない。あなたたちどうやって次のエリアに進むの?」
エルエルが飛んでホールをぐるぐる回っている。
「え、ほら、誰か一人くらい生き残ってるんじゃ?」
「多分それはないわね。ここのボスは、ロザリー。配下はアンデッドしか居ないわ」
まじか。根性無い奴らだな。弱すぎだろ。せめて書き置きくらい残しとけよ。差し込む光に影が。あれはコウモリ。生き残りがいるじゃねーか。天窓が開いて一匹の大きなコウモリが部屋に入ってくる。どうやって開けた? 自動ドアかよ。コウモリは床に降り立つと膨れ上がって一人の男になった。なんでタキシード?
「スイカバスト。やり過ぎなのである。私の神殿が棺桶塗れになってるじゃないか」
また出やがった。ヴァンパイアロードエビシ。昨日浄化してやったのに元気な奴だ。
「また、昇天したいのか?」
「待つのである。姫様も含め、我が同胞は処理待ちで動けないから、わざわざ道案内に来たのである」
「なんだよ処理待ちって」
「あまりにも大勢が浄化されてしまったから、復活システムがパンクしてしまったのである。今、弱い者から順番に蘇生させてるとこである」
アンデッドを蘇生? なんか言葉的におかしいけど、ツッコんだら話長くなるからやめとく。
「ふーん。じゃ、さっさと次のエリアに案内しろよ」
「待つのである。せっかく姫様の離宮に来たのになんとも思わんのか? この細部までこだわった構造。風情ある装飾」
エビシがパチンと指を鳴らす。ピアノの蓋が上がり鍵盤が見えない誰かが弾いてるかのように沈む。自動ピアノって初めて見た。
ポン、ポンポ、ポポポポポポポン♪
この曲は、ドビュッシーの月の光。
月の光差し込む中聞く月の光。その中舞う天使。悪くはないな。
「いいもんであろう。本来なら、姫様がここで弾いてるふりをして、曲も佳境に入ったとこで、扉や窓をぶち破ってゾンビの大軍がなだれ込んでくる予定だったのであるよ」
ロザリー、エアプかよ。
「そうか、浄化して正解だったな」
オチがそれだったのかよ。笑えんな。バイオハザードか! 僕が好きな月の光をゾンビに使おうとするな。ドビュッシーに謝れ。
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。




