トレント
「誰から行くか?」
僕たちはしばらく走り回るトレントを追いかけて観察し続けて、そのルートの法則性を割り出した。ランダムに走ってるのではなくいびつな図形を描きながら同じとこを走っている。トレントは僕たちが今いる森が開けたとこで五周回ってから、また奥に走って行く。もうじき奴が来る。ここがチャンスだ。
方法は簡単。重力をカットして超加速で地面を蹴り、体を砲弾と化してトレントの口に飛び込む。
「まずは、私から」
僕はウシオの背中に軽く手を触れる。
「グラビティ・ゼロ!」
ドゴン!
大地に穴を空け、ウシオは飛び出す。やり過ぎだろ。そして一直線にトレントの口に突き刺さる。
ゴゴッ!
ウシオの強打を受けてもトレントは少しノックバックしただけで、何事も無かったかのように走り出す。ウシオは口の中に消えてった。食べられたって訳じゃないよな?
「ご主人様、中は広いです。天井には気を付けてください!」
さすが僕のウシオ。気が効くな。
「「グラビティ・ゼロ!」」
サリーとシェイドの声がハモる。
トンッ。
軽い音と伴に、サリー、シェイドの順番で飛んでいく。そして、華麗に回転しながらトレントの口の中に飛び込んでいく。さすがだ。次は僕の番だな。
なんかこういうの昔ゲームセンターで見た気がするな。怪獣かなんかの口にボールを投げまくるやつだ。けど、今回ボールは僕だ。トレントが3周目まわって4周目。次成功しないとここでしばらく待つ事になる。それはめんどい。集中だ。よしっ!
「グラビティ・ゼロ!」
トンッ。
僕は軽く地面を蹴るが重量が無い僕は超加速でトレントの口目がけて突っ込む。サリー達は回転して上手く天井を蹴って方向転換したのだろう。僕も真似てグルグル回ろうとして体を丸めようとする。
「いてっ!」
勢い余って僕のデカい胸に膝蹴りかましてしまった。反動で体が伸びたと思ったら回る視界の中トレントの口に突っ込む。
「うばっ!」
もろに口の中の天井に顔をぶつける。
ごきゅ!
首から変な音が。あと顔がヌルヌルする。視界が広がったと思ったら僕は転がり落ちていく。
「マリーちゃん」
柔らかいものに包まれる。サリーだ。と思った時には意識が遠くなっていった。
「大丈夫?」
「大丈夫かっ?」
「大丈夫ですか? ご主人様?」
僕を覗き込むサリー、シェイド、ウシオ。どうやらサリーに階段で膝枕されてるみたいだ。
「大丈夫だよ。けど、もっといい方法あったはずだよね?」
3人とも無言で肯いている。けど、穴があったら飛び込んでみたくなる。それが男っていうものだよね。
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