毛づくろい
「結構な量になったな。お前、堕天し過ぎだろ」
水から上がって来たウシオと僕は一心不乱にエルエルの先が黒くなった羽根をむしり続ける。ぱっと見少しだけだと思ったけど、実際は結構先が黒いのが多かった。それに、奴の翼は8枚もありやがる。石に座って足を水に浸けているエルエルの背中側に座って中腰で羽根をむしるのは意外にしんどかった。マリーはスタミナほぼ無いので、途中からほぼほぼウシオにむしってもらっている。
「しょうがないじゃない。なんか魔王の欠片に乗っ取られてたんだから」
エルエルは口を尖らせる。その前に、そもそも魔王の欠片ってどんなものなんだろう?
「お前、どうして魔王の欠片なんて持ってたんだ?」
僕もたまには羽根を抜いてやる。
「痛っ。あんた、下手ねー。もうちょっと勢い良くブチッと言って。ソロソロと抜かれると痛いんだから。そうね、魔王の欠片ね、んー、なんでだろうねー?」
なんか僕ら、猿が毛づくろいしてるみたいだな。それか婆ちゃんの白髪抜く孫か?
「自分の事だろ。覚えてないんか?」
「堕天したから欠片に魅入られたのか、欠片に魅入られたから堕天したのか、昔の事だから思い出せないのよねー。けど、今、こうしてるからいいんじゃないの?」
「で、お前に取り憑いてた魔王の欠片は間違いなく消滅したのか?」
「そうね、多分、きれいさっぱり無くなったわ。けど、あんた凄いわよねー。神様でさえ割る事しか出来なかった魔王の魂を消滅させるなんてねー。あと欠片は7つあるから、間違いなくあんた命狙われるわよねー」
ん、なんかコイツ今重要な事言って無いか? 魔王の欠片に命を狙われる? それって大問題じゃないのか?
「ちょっと待った。あと7つもあるのか? なんでお前そんな事知ってるんだ?」
「そりゃ当たり前でしょ。わたしと魔王の欠片は魂が融合してたんだから」
「じゃ、他の7つの事で知ってる事、なんでもいいから教えてくれ」
「んー、おぼろげだけどねー。欠片の目的は成長。魔王は追放された神、神は成長しない。それで技能や技術を継承して成長した人種に敗れた訳だけど、欠片になって色んな成長する存在と共に成長する事で強くなろうとしてるみたいね。わたしは死霊術を突き詰めていった訳だけど、他の何かの最強を目指す者に取り憑いてるのかもねー。わたしが知ってるのは1つはどっかに封印されてて、1つは剣の道を究める事に夢中で人間にとっては無害な存在になってて、1つは瀕死って事くらいかしらねー。あんた、羽根抜き下手だから、肩もんで」
肩揉むくらいお安い御用だ。それでこの情報は安い!




