幕間(後編)
僕は岩に腰掛け、彼女たちが起きるのを待っている。
それにしても、黄金認識票の冒険者はとても強かった。
なんとか倒すことは出来たが、裸でなかったら負けてた可能性の方が高い。
複雑な気分だ……
それに、昨日、今日と、刺激的な出来事が多すぎた。いままで、学校のダンス位でしか、女子と触れ合った事のない僕にはレベルが高すぎた。
ちなみに『セイクリッド・マローダー』の二人は一緒にいた時間は短いし、女性としてはビーンボールすぎる。今の状況は少し嬉しいけど、もっとソフトであって欲しい。
「ううーんっ……」
アナが伸びをして起きる。
「あんた、誰だ?」
シャツを抱き、立ち上がり僕を見る。
「ふわぁーっ」
「うーん」
サリーと、モモさんも目を覚まし立ち上がる。
「冒険者だ。あんた達が倒れてたから、見張っててやった」
出来るだけ低い声をだす。ハードボイルド主人公イメージだ。クレイジー仮面とキャラが被らないように。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
「ありがとー」
三人は、深々と頭を下げる。意外に良識あるのでは?
「こんなとこで、そんな薄着で何してたんだ? その服はやるよ、目のやり場に困るからな」
三人は、僕に改めて頭を下げて礼を言う。
「お兄さん、もしかして、あたしたちのいろんな所見た?」
サリーがいたずらっぽい顔つきで、いきなりぶっ込んでくる。
「な、なに言ってる。服掛けてやってただろ」
僕はうわずる声を抑え、何事もなかったかのように答える。
「おまえ、私たちの変なとこ触ったりしてないだろうな?」
アナが、口角を不敵に上げて問う。なんでコイツは初対面なはずなのにこんなに高圧的なんだ?
「そんなこと、するわけないだろ」
不機嫌そうに、吐き捨てる。
「ほう! おまえは薄着で下着を着けてない可憐な女性が寝てたのに、見てない、触ってない、有り得んな! おまえホモなのか?」
まじうぜー! エルフってこんなのばっかなのか?
「ホモじゃねーよ! 男が全て野獣だと思うなよ!」
「わかったわー。不能ってやつねー。聞いたことあるわー」
サリーは、明らかにたのしんでやがる。
「そんなんじゃねーよ。若い女の子がそういう話するなよ」
なにが悲しくて、肉体的にいたぶられて、その後さらに、精神的にもいたぶられにゃあかんのだろうか?
「じゃ、触ったんだな。このド変態め!」
調子にのるな、このド貧乳め!
「話を聞け! コラッ! お前は触ってない!」
アナとサリーはニヤッと笑い目を見合わせる。やば、失言だ。
「「「お前は?」」」
三人がハモる。
「やっぱり、触ったんだな、なぜ、私は除外なんだ?」
アナ、お前だけは触りたくない。というか関わりたくない!
「きゃーやらしー。どこ触られたんだろ。えっちぃ!」
サリーが体をくねくねする。こいつも苦手だ、ペースを崩される。
「触った訳じゃない、あんたが俺に抱きついてきたんだ。不可抗力だ」
「私も触ったの?」
モモさんが口を開く。僕は彼女のような、清楚で大人しいほうがいい。
「いや、君の場合は少し見えかけただけだ。わざとじゃない」
ゆっくり落ちついて、話すボロが出ないように。
「恥ずかしい……」
ポッと顔を赤らめる。やばい、超可愛い!
「私だけ不公平だな、しょうが無いこっちにこい、触らせてやる!」
何を言ってるんだ、アナは、もう口を開かないでほしい。
「痴女かっ! お前は!!」
「私だけ、置いてかれるのはいやだ!」
「じゃ、そこらのおっさんにでも頼め! はい、解決! 次」
辺りを静寂が包む。今の言い回しどっかで聞いたような?
キュピーン!
三人の目が光る。
「脱げ! 四の五の言わずに全部ぬげ!」
アナが大声を上げる。
「な、なんだそりゃ? 助けてやったのに、訳わかんねーよ!」
もしかして、ばれかけてんじゃ? 声が震えそうになる。
「お前は、我々の際どい姿を見た、助けてもらったのは、これでチャラだ。さらに、いろんな所を触りまくった。有罪だ、これで貸し1つだ!」
アナが僕に指を突き付ける。なんてめちゃくちゃな論理だ。
「それで、なんで脱がにゃならんのだ? お前、頭大丈夫か?」
いかん、目を見て話せない……
「まあ、話を聞け! 我々は、先ほど、顔にパンツを被った変態男に遅れをとった。男性にあまり慣れていなかったのが敗因だ。より強くなるためにお前の協力が必要なんだ。それに、もしかしたら、お前がパンツ男かもしれんしな、脱がして改めさせてもらう!」
アナは目をまたキラキラさせている。この変態がっ。
「そうね、たしかめないとね! ゴクッ!」
サリー! 唾を飲み込むな!
「私も手伝います!」
なんとっ! モモさん、君も変態なのか?
にじり寄る3人。
「勘弁してくれーーーっ!」
僕は一目散に、逃げ出した。
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