最低の食事
「見て見て、またベルがなんか言いそうよ」
サリーがディスプレイを指差す。なんとか重苦しい空気が消えた。
また、パンパンとベルが柏手を打つ。
「お前たち。静まりなさい。お前たちは弱い。とても弱い。魔法もろくに使えないし、体内のマナの総量も少ないかしら」
男子たちは押し黙る。自分たちが弱いという自覚があるのだろう。見た所聞いた所、パペットマン4号相手に善戦した者は皆無だもんな。
けどベルの言葉はブーメランだな。変態魔法しか使えないベルも魔法をろくに使えない側だと思うが?
「お前たち。力は欲しくないのかしら」
教壇の上からベルが言う。そして、男子一人一人に目を巡らせる。
「だけど、お前たちの目の前にあるその『アンブロシア』を食べると、マリーの魔力の一部を手に入れる事が出来るかしら。食べるか食べないかはお前たちが決めていいわ。もしこれを食べたら普通の人という一線を超えて、今まで見たことが無い世界が広がるかしら。あと当然ながらアンブロシアは栄養満点よ。人間が生きてく上で必要な栄養はバランスよく全て含まれてるわ。これもマリーちゃんのお陰ね」
ベルはゆっくりと諭すかのように言葉を紡ぐ。まじか、僕から吸い取ったマナで出来たアンブロシアにそんな効果があるとは。
モニターの中の教室は静寂に包まれる。
「栄養満点か……。そう言えば、人間は食べたものの20%しか消化出来ないって言うしな」
男子の誰かが呟く。だからそれは僕が消化したものじゃないっつーの。
「一線を超えるか……僕は力が欲しい。例え人としての一線を超えたとしても。それにマリーちゃんのなら食える。むしろダイレクトに食べたい!」
モニターが回って後ろを写す。大人しそうな少年はスプーンを手にすると、ビチャビチャ音を立てながら、アンブロシアを口に運び始めた。僕は背筋が凍るような恐怖を感じる。ダイレクトとかほざいてやがったよな? 可愛いと言ってもいい顔のくせに、コイツは変態だ。ガチの変態だ。
「あ、コイツだよ。女子の名前とスリーサイズ全部知ってたのは。たしかカーチスって名前だ」
カーチス。覚えたぞ。コイツは魔物だ。性犯罪者予備軍だ。絶対コイツのそばには近寄らないようにしよう。
「おおおおおおっ! みなぎるっ! 美味いぞぉーーーーーっ! サイコーだよマリーちゃん!」
カーチス、僕の名前を口にするな!
「ゲッ!」
「うわっ!」
「ヒイッ!」
モニター見てる女の子たちが軽く悲鳴を上げる。ディスプレイの中ではキョロキョロ視線が移り、アンブロシアを口にする男子たちを映し出す。フォークで、スプーンで、素手でアンブロシアを食していく獣たち。僕はコイツらが食べてるのはかりんとうのようなものだと思い込む事にする。実際可食だもんな。
「死んでもコイツらとはチューしたくないわ」
ケリーがなんか言っている。
「ゴクリッ」
唾を飲み込む音がして、チビデブは手を伸ばしアンブロシアを口に運ぶ。コイツ間違い無く喜んで口にしたよな? コイツも危険人物確定だ。
「お前たち。慌てなくていいかしら。おかわりはたっぷりあるかしら」
ベルの声が教室はに響く。
「なあ、もう消してはもいいか?」
僕が振り返ると、みんな疲れきったような表情で首を縦に振った。
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