扉
「まず現状把握のために、この扉を開けてみようと思います」
ベルは教壇側の扉の外にある扉に近づく。教室の扉はスライド式だけど、この扉はノブが付いている。木の板を組み合わせよな質素な作りの扉だ。
「開けます!」
ガチャ。
ベルがノブを回し引っ張る。
「おかしいわ。開かないわね」
ベルはノブをガチャガチャしてる。もしかしてダミーの扉なのか?
「おい、ベルどいてみろ」
ベルの隣にウシオがやって来る。
「ウシオ、ここではベルは先生よ。ベル先生って呼びなさい」
「お前は俺の教師ではない。相変わらず、お前は馬鹿か? 簡単に開くではないか」
ウシオは簡単に扉を押し開ける。
「なによ、ちょっと茶目っ気みせただけじゃない。けど普通、扉って引くものよね」
うん、そうだ。出口の扉は基本的に引くものだ。引く扉だったら何かあった時に押さえる事で扉を塞ぐ事が出来る。と言う事は、この扉は入り口。僕らはこれからどっかに入って行く事になるのか。
「マリー、来てみて」
ベルに呼ばれて、僕はドアの前に立つ。
教室の明かりが漏れて僕の影を長く伸ばし、部屋の中を照らしている。そこは教室くらいの広さがある部屋で壁には棚みたいなものが見える。そして、中央佇む1つの影。すらっとした体に楕円体を組み合わせたような体。そう、デッサン人形みたいなものだ。微塵も動かない。
「光よ!」
ベルの魔法で部屋が照らされる。中央の人影はやはり、迷宮都市にいたウッドゴーレムだと思われる。動かないからただの像の可能性もある。
そして壁の棚には僕が収納に入れている物の数々。いかん、これは恥ずかしいしまずい。まあ、普通の物に紛れて、クレイジー仮面の時に被ってたパンツや食べかけのお菓子、母さんがトランクに入れていた恥ずかしい下着など乱雑に棚に乗ってる。ここを見られたら僕のイメージが…… なんかこれじゃ片付けが出来ない人且つかなりエロい人みたいだ。とりあえずウシオの手を引いて中に入る。
「ウシオ、ドアを閉めろ!」
「はい、ご主人様」
ドアを閉めてウシオに扉を押さえて貰う。これでしばらく時間稼ぎが出来るはず。スカートを押さえつつ、見られたらヤバい物を掻き集めてトランクに詰め込む。マリーな僕の中で最速の動きだったと思う。
「どうしたのマリーちゃん、敵? 敵なのね」
ドアが叩かれてサリーの声がする。
「違うちょっとした野暮用だ」
「マリー、ウシオ、開けるのかしら」
ベルの声。ヤツには分子分解がある。けど見渡してもうヤバいものは無い。
「ウシオ、もう大丈夫だ」
「承知いたしました」
ウシオが扉を開けると、アナとアルスがなだれ込んでくる。さすが僕のウシオ。この変態超人2人合わせても力では負けないのか。
「おい、野暮用ってなんだ? お花摘みか?」
おい、アナ、目を輝かせて言う事か? 1人でお花畑でお花摘めばいいよ。
「僕の収納に入れてたものがあったから、下着とか男子に見られたくないものを隠してただけだ」
うん、嘘は言ってない。アナはやたらそう言うのに敏感だからな。サリーとベルも部屋に入ってくる。
「マリー様、そう言う事なら言っていただけたら私がしますのに」
聞いた事が無い、やたらキンキンしたアニメ声。
「誰だっ?」
声の方を向く。
「私の名前はパペットマン4号。マリー様の収納の担当者です」
デッサン人形のようなウッドゴーレムが右手を下げて恭しく頭を下げる。と言う事は母さんの部下か?
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