魔法の収納
「という訳で、まずは何から始めましょうかねー?」
ベルは教壇で腕を組む。おいおい、考え無しかよ。勢いとノリだけで人の運命をもてあそばないでほしいもんだ。放校か昇格。極端過ぎるだろ。
「そうね、何人か知ってる顔はいるけど、ほぼここにいる生徒とはベルは初対面よね。まずは自己紹介してもらおうかしら。一発芸つきで。ちなみに下品は禁止。特にマリーさん」
「おい、待てよ。いつ僕が下品な事した?」
「何言ってるのかしら。アルスほどじゃないにしても、マリーもいつも脱いでばっかじゃない?」
ベルの言葉にクラス全員の視線が僕に集中する。ある者は驚愕。ある者は期待に溢れた目で。少し気圧された。
「勘違いするな。いつも不可抗力だ。脱がない。絶対に脱がないぞ」
「それってフリかな? それともフラグかな?」
サリーが何か言ってるけどスルーする。サリーをスルー。なんか語呂がいい。
「先生、自己紹介は分かりますが、なんで一発芸もしないといけないんですか?」
さっきの真面目そうな眼鏡女子が手を上げる。痩せてて黒髪ツインテ。委員長って感じだ。頭良さそうなのになんでG組に居るんだろうか?
「それはですね。魔法を使うのにはかなりの胆力と機転が必要です。パッと人前で一発芸の1回や2回出来ないようだったら、一流の魔道士には成れないです」
ベルが一流の魔道士かどうがは置いといて、中々理に適っている。確かに機転と胆力、どちらも魔道士には必要なものだ。
そして誰も言い返せなく、一発芸込みの自己紹介が繰り広げられていった。
当然ただの学生如きの一発芸がウケる訳も無く、だだすべりの氷点下の空気の中、僕の番がやってくる。
一発芸。
僕に出来る事と言えば、回復魔法、重力操作、ゲッ、これしか無い。あと、巨乳? 巨乳を使った一発芸など下品な事しか思いつかない。
あ、あった。母さんから貰った魔法の収納。僕の収納はデカい物も入ってるからそれを出したら少しはウケるかも?
ちなみに、ベルは教壇の横に椅子を置いて座っていて、1人1人教壇に立って自己紹介と言うよりも公開処刑されている。下ネタを禁じられただけで、こうも人間って面白く無くなるもんなんだな。
けど、僕は負けない。この空気を変えてやる!
そして、僕は教壇に立つ。
「それでは、マリー、いきますっ! 3、2、1」
がばっと収納からトランクを出す。空間の穴を教卓に隠して。
「はい! トランクが現れました!」
パチ、パチ、パチ、パチ。
サリーとアルスだけの寂しい拍手。やっぱ。ダメだったか……
「マリー! 面白くないわ。脱げー!」
やじるアナ。
「脱ぐかボケェ! 下ネタ禁止なんじゃ!」
とりあえず吠える。ここは勢いで乗りきってやる。
「マリー、そう言えば、マリーの魔法の収納っておっきいわよね。ちょっと入り口開けてみて」
ベルは興味を持ってくれたみたいだ。とりあえず空間に収納の入り口を空ける。
「マリーも入るかしら?」
「うわ、止めろベルッ!」
ベルは僕にしがみつくと僕を持ち上げて僕の頭を収納の入り口に突っ込もうとする。ベルくせに意外に力が強い。抵抗虚しく収納の入り口に頭を突っ込まれる。
いかん、つい油断してしまった……
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