第三十九話 黄金認識票の力
ヒュルルルルルルルーッ……
一陣の風が吹き抜ける。
僕は、荒野で3人の少女と対峙している。枯れたような色のコロコロした草が風にのって転がっていく。
彼女たちから放たれるプレッシャーで、手にびっしょりと汗をかく。
黄金認識票の冒険者、その数は少なく、英雄と言っても過言のない者達だ。その英雄達に、なにが悲しくて討伐されそうになってるのだろうか?
タイタンとの戦いを思い出す。彼女たちは人外だ。本気を出させる前になんとかしないと危険だ。
しかも、クリアしないといけないハードルが高すぎる。相手を出来るだけ傷つけず、撃退あるいは無力化しなければならない。お尋ね者にはなりたくないからな。
そのうえ、手の内を出来るだけさらけ出さないようにせねばならない。後で僕の正体がばれる可能性がある。
裸同然で徒手空拳で、しかも格上の相手にどうやったら可能なのだろうか?
けど、僕は諦めない。どんな困難でも足搔いて足搔いて諦めず勝利を掴むそれが真の英雄ってものだ!
今の状況は僕の持つとある魔法が最適だ。
『スリープタッチ』
素手で触れた者を眠らせるという魔法でそれを全身に展開する。無詠唱でしかも体の中に魔法を張り巡らせているから見られても何をしてるか解らない。母さんのオリジナル魔法だそうだ。相手が気を張ってる時は抵抗されたりするが、心を乱していたらサクッと決まる。これで無力化するしかない。
「先にいかせてもらう。アクセル・テン」
人として限界の加速を体に付与する。
「テトラ・アタック!」
アナが鋭い突きを繰り出す。その穂先が三つに分かれる。人の限界を超えた三連突き! 僕の頭に沖田総司という伝説の剣匠の名前が浮かぶ。人間の限界を超えた連突きは、まるで先が分かれたように見えるというのを体験した。箒でだけど。
びびってかなり後退しなければ、これで終わっていた。
「おおおおりゃーっ!」
「グラビティ・ゼロ!」
アナの後ろから、飛び出したモモさんが僕に拳の連打を叩き込む。複数の衝撃が体にはしる。早くて重い。どんだけ怪力なんだ!
僕は後方にふっとばされる。けど、宙に浮いてる羽毛を殴りつけたようなものだ。重量ゼロ近くで浮いていた僕は、あまりダメージもなく激しく吹っ飛んでいく。
チャンスだ!
僕は両足に力を込め大地を蹴る。
「甘いっ!」
アナが箒で僕を叩き付ける。距離を取ったはずなのに瞬時に接近し、飛ぼうとした僕をはばんだ。瞬時に両腕でカバーしたのでダメージは無い。その衝撃を後ろに転がって流す。
流石が高ランクの冒険者!
受け身をとって立ち上がった僕に、3人が追いつく。
なんて全員身体能力が高いんだ……
「秘められた、全てのの力を解放せよ! フルポテンシャル!」
大人しかったサリーが、詠唱してた魔法を解放する。
彼女から溢れ出た光が、3人を包み込み体が金色に発光する。
「あんた、終わったわね! 私達の全ての潜在能力が解放された。大人しくボコられるのよ!」
サリー解説ありがとう。
けど、薄着で発光してたら、いろんなもの透けて見えますよ。
潜在能力よりも、もっと素晴らしいものが解放されている。現に、凶悪に存在をアピールしている彼女の胸の形が丸わかりだ。
やばい、僕のロンギヌスが進化しそうだ。あと、鼻血の気配もする。もっと、見ていたいとこではあるが、僕の体がもちそうでは無いので、
「あのですねー、薄着で光ると服が透けますよ」
「「「キャーーーーッ!」」」
彼女らは、自分たちの姿を見て気付き、大事なところを手で隠す。
「なんて、卑怯な!」
自爆でしょうが。
3人の中で、服的に防御力が一番高いアナが僕に襲いかかる。だが、胸を隠すために左手は塞がり、明らかに先ほどよりは精細を欠く。
後の2人は、胸とお股を押さえてもじもじしてる。
明らかに潜在能力を解放する事で、弱体化している。
もしかしたら、逃げきれるのでは?
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