第六十八話 生還
「マリーちゃん、あたしたちは置いて行って……死んだりはしないと思うから……後で迎えに来て……」
サリーとシェイドは倒れこんで動かなくなる。
「駄目だ! サリー! 一緒に行くぞ!」
僕ももうふらふらだが、サリーに肩を貸し起こそうとする。サリーは気を失っていて、疲れもあって重くて持ち上がらない。
「貸し1つかしら!」
ベルがシェイドに肩を貸し起こす。
「ベル、ありがとう……」
シェイドが薄目を開き口を開く。
「サリー! あと少しだ目を開けろ!」
駄目だ。サリーは動かない。急にサリーが軽くなり持ち上がる。牛男だ! 牛男はメイさんを左脇にかかえ、右手でサリーを支えている。左からは僕が肩を貸していて、2人でサリーを引きずっていく。
「ご主人様、苦労をかけて申し訳ございません。まだ、麻痺が解けきってないのですよ……」
「ありがとう。牛男。こちらこそ、すまない」
結構時間が経ってるのにまだ後遺症があるってことは、後遺症ではなくて、この塩山自体に闇属性の者を弱体化させる何かがあるのかもしれない。
小柄なサリーがとても重く感じる。正直思う。体をもっと鍛えてたら良かった……
僕達は、少しでも前進する。塩に足をとられて躓きそうになりながら。それでも僕たちは諦めない。絶対に生還してみせる。みんなで助け合いながら。『人』という字は2人の人が支え合っている形って聞いたのを思い出す。今の僕らはまさにそうだろう。牛、ドライアード、廃エルフ。種族は違えども、中身は紛うことなき『人』だ。『人』は『不死者』に屈しない。負けてたまるか! あ、けど、この状況をもたらしたのはベルとサリーか………
北辰を正面に捉える。あと少しのはず。
意識が飛びそうになるが、必死にこらえる。
楽しい事を考える。今はお風呂につかりたい。正直、胸が重い子供にしがみつかれてるみたいだ。風呂につかって解放されたい。
水、水も欲しい。たまに風に巻き上げられた塩が体にあたる。全身がひりひりする。多分水分を持ってかれてるんだ。塩漬けにならなかった僕でこうだから、埋まったみんなはもっとひどいはず。
せっかく死王を倒した? のに、こんな所で息絶える訳にはいかない!
「うわっ!」
僕は何かに躓いて転びそうになるのをなんとか持ちこたえる。僕がこけたらサリーは顔面強打してしまう。足元がフワフワする。柔らかいのか? 逆だ大地が固くなって感覚がおかしくなってるんだ! 足元は塩だけど、これは飛ばされてきたものだろう。歩くと少しずつ塩が減っていく。その塩もなくなり、魔力が回復し始めたのを感じる!
「しゃーーーーーーーーっ! やったぞー!」
僕は最後の力で右手を突き上げる! 何を成し遂げたのかこの時はわからなかったけど、どうしても叫びたかった! 生還した!
「うん! やったかしら!」
シェイドをゆっくり座らせて、自分もしゃがみベルは大地に横たわる。そして動かなくなる。そっか、疲れてない訳ないな、一番スタミナ無いはずだし。僕達を勇気づけるために元気な振りしてただけだったんだ。なんだかんだで、ベルはいい奴ではある。
「やりましたね……これで安心です」
牛男は座り込む。サリーの重さが僕にかかりサリーが地面にキスをしそうになる。僕は体を滑り込ませてサリーを守る。背中を擦りむくがその痛みすら嬉しい! 僕はサリーの頭を胸に大の字に横たわる。
「済みません、ご主人様。力が抜けました…」
「牛男! 気にすんな! まじ疲れたな! けど、やったんだ! やり抜いたんだよ!ハハハハハハハッ!」
僕は寝転んで笑う!
「そうですね。伝説をぶっこわしましたね。ハハハッ……」
牛男も寝転んで笑う。
「これからはベルたちが伝説よ! キャハハハハハ!」
ベルも笑う!
疲れと、嬉しさの謎テンションで、しばらく僕達は笑い続けた。
第十三章 迷宮都市サーレ 完
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