第六十七話 北辰
「んー、喉が渇くな」
なんか口の中もジガジガする。
「マリー。しゃべらない方がいいかしら。余計喉が渇くわよ」
ベルが元気に答える。
おかしい、塩砂漠が終わらない? そんなに塩砂漠が広い訳が無い。
「みんなストップ。少し休憩しよう」
みんなドサッと腰を下ろす。一番衰弱がひどいのはメイさんで目は閉じかけてほぼ意識を失いかけている。それを牛男が支えてどうにか歩いてきた。次はシェイドでサリーと肩を組んでいる。シェイドは目が虚ろで一言も声を発さない。
僕は来た方を向く。よく見ると微妙に足跡が右に傾いでいる。あ、そう言えば、昔聞いたことがある。何も目印が無いところを歩くと、軸足側に偏って微妙に弧を描いて歩く事になり、また同じ所に戻ると。ベルの利き手は右だから軸足は左だ。多分スタート自体が左手に山からで、かすかに反時計回りの螺旋を描きながら進み、一番長いルートを選択したのだろう。そして、今は塩山のまわりをぐるぐる回っていたのだろう。バカみたいな話だが、目印無しで歩き始めたのがそもそもの間違いだった。全員無事だったことで舞い上がってたからな……
「マリーちゃん、まだ出発しないの、なんか寒くなってきたわ」
サリーが身をすくめてる。うん、肌寒い。僕らはベル以外裸に近い格好だ。水も必要だけど、低体温症もやばいな。
「サリー、多分僕らは山のまわりを、ぐるぐるまわっている。現在地を割り出すからあと少し待ってくれ」
理科の授業で習った北斗七星を探すが星がたくさんで識別できない。空を隅々まで見てやっと見つける。空の結構上の方にあって思ってたより大きかったから見逃してた。柄杓の先の二つの星を結んだ線をのばすと、あった北極星だ! 北極星と塩山の一番高い所を頭の中で線でむすび、僕達の歩いて来た道の線と交差させる。ほぼ垂直だ。と言うことは僕達は今東から西に進んでた訳で北極星の方に進むと骸骨城の北に出るはずだ。しかも塩砂漠を出る最短距離のはず。
「誰か、骸骨城の北には何があるか知らないか?」
「うろ覚えだけど、たしか死霊の湿地帯というのがあった気がする……」
サリーが答える。声に元気がない。さすが物知りさんだ。湿地帯か、嫌な感じだけどここよりはましだろう。
「そうか、あと少しでここを出れると思う。あと少し頑張ってくれ!」
僕は北辰に向かい歩きはじめ、みんなついてくる。
ベルが歌い始めて、なんでこいつだけ元気なのか無性に腹が立つが、体力温存のためにみんなスルーした。
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