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 第六十三話 世界樹の下着


「わ、私、助かったの? な、何が起こったの?」


 メイさんは若干目の焦点が合ってない。


「黒ベルの魔法で、光に触れた生き物でないものは、すべて塩になったんだ。城も山も」


 僕は骸骨城があった所を指差す。そこにはこんもりとした砂山のようなものがあり、月明かりに照らされてキラキラしている。砂漠みたいだ。


「じゃあ、骸骨城は? 死王は?」


「塩になったんじゃないかしら? 死王なだけに!」


 メイさんにベルが親父ギャグで答える。

 

 笑えんな! 微塵も!


 そういえばベルはロリババアだったな。


「ウシオさん! ウシオさんは?」


「牛男も多分塩漬けよ! そして多分言ってるかしら! うっ塩って! キャハハッ!」


 また、メイさんにベルが親父ギャグで返す。座布団一枚って言いそうになるのをこらえる。甘やかしちゃいかん! 牛男は大丈夫って確信できるから、まだ笑えるが、そうじゃなかったらサイコパス過ぎる!


「牛男たちが埋まってるのはもっと先だから、行ってみるか」


 僕は塩山の高い所を見る。多分牛男と別れたのはあそこ位だろう。


 サリーがメイさんに肩を貸して起こす。なんとか立ち上がり、歩けるみたいだ。メイさんは1人で立つ。


「じゃ、いきましょうか!」


 サリーを先頭に僕達は進む。


 僕はメイさんの横に並ぶ。


「つかぬことの聞くけど、メイさん、その下着って何の素材でできてるの?」


「わかる! わかるかしら! これって世界樹素材でできてるのよ! 高かったけど、買ってよかったわ! 破けても元に戻るし、消臭、殺菌作用があって、汗とか液体がかかってもすぐに吸収してサラサラになるのよ! こんな形になっても世界樹は生きてるそうよ!」


 メイさんは早口でまくしたてる。自慢したかったのだろう。もしかして変なスイッチを押してしまったのでは? それにしても生きてる下着って気持ち悪い。呪いのアイテムみたいだ。けど、生物認定されたおかげで黒ベルの分解の魔法から逃れたのか。けど、世界樹って貴重なものなのではないのか? それを下着にするドライアードっていったい……


「それで、メイさんはいつもこんな感じの下着つけてるの?」


 サリーが振り返る。


「まっさかー! いつもは普通の地味なのよ、今日は休憩時間に着替えて来たのよ! それがこんなに役にたつなんて! もし着替えてなかったら、私今は裸で歩いてた訳よね!」


 メイさんのテンションはなぜか高い。正直、今も裸とかわらないんじゃ? 僕はその言葉を飲み込む。


 上に向かってるが、勾配がきつくなり、足下も新雪を踏んでるような感触になる。


 ズシャーッ!


 僕は足をとられ、バランスを崩し後ろに倒れる。


「大丈夫?」


 サリーが駆け寄って来て、僕に手をだす。スカートの中が見えるが暗くてなんも判らない。そういえば、サリーも何も穿いてないんだった、気をつけないと。


「これ以上は登れないみたいだな」


 僕達は、歩みを止めて、山の上の方を見た。牛男とシェイド大丈夫だろうか?



 読んでいただきありがとうございます。


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