第六十話 不条理
「ううっ!」
僕はうめきながらなんとか立ち上がる。腰から下は何もつけてない! 下半身丸出しだ……
なんかいつもそんなんばっかな気がする。思い起こしてみて、転生前には人前で裸になる事なんて一度も無かった。もしかして僕の魂に宿る神って裸の神なのか? それなら間違いなく邪神だろう。
収納から服を出そうとするが、収納魔法すら使えない! 他のスキルや魔法を発動させるが何も起きない。これってヤバくないか? スキルが無いと、僕はただの女の子だ。いや、スキルがあっても変わらないか。早く誰かと合流しないと。
僕は残ったワンピースを千切り腰に巻く。なんとか見えちゃいけない所は隠れた。靴も無いけれど、足下はサラサラした砂みたいなものなので、少し埋まるけど、歩いても痛くない。けど若干足の裏がジガジガする。しゃがんて掬って見る。少しペロッと舐めてみると、予想通り塩だった。
僕が倒れていた所を見ると丁度そこを境に土と塩に別れている。ギリギリ助かった。日頃の行いのおかげだろう。あと少しで全裸になる所だった。
ベルの必殺魔法の分子分解ディスインテグレイトは無生物を塩に変える。その最上位魔法の『原始の世界』は、起点を中心に球状に全ての無生物を塩に変えるという恐ろしい魔法だ。今回は城と共に小山一つを塩に変えたと思われる。死んではいないとは思うが、みんな無事だろうか?
「サリー! 牛男! メイさん! シェイド!」
僕は大声で呼ぶ!
動くものは何一つ無い。埋もれてるのか? 早く助けないと。あ、そうだ! 気は進まないが一応呼んでみるか。
「ベールー!」
塩の山に埋もれて戒められてたらいいなと思いながら呼んでみる。
「何かしらマリー! 呼んだかしら?」
後ろから元気なベルの声が聞こえる。なにっ! なんだとぉ!
愕いて振り返ると、不機嫌そうに腕を組んでるベルがいた。いつも通りの格好だ。ツインドリルが風で優雅に揺れている。
「ベル! お前、何で無事なんだ?」
「何言ってるのかしら! お前たちはちんたらしていすぎるのかしら!」
「お前! ビームくらってのたうちまわってただろ!」
「ベルが一体何回ギルティビームくらったと思ってるのかしら!」
要は、ベルは今までしこたまギルティビームをくらいまくっていたから、すぐに復帰できて、僕達を置いて、速攻逃げ出したということか!
全ての元凶のこいつが、のうのうと無事でいるとはなんと理不尽なのだろうか?
「天誅! 乳チョークホールド!」
「キャッ、待って息がフゴッ!」
僕はベルを胸に埋め、動かなくなるまで、締め付けてやった!
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