第五十九話 消滅の光
「グラビティ・ゼロ!」
僕は走りだし、慣れ親しんだスキルで自分の重力をコントロールしようとするが、徒労に終わる。色々試してみるが、魔法やスキルが全く発動しない!
「マリーちゃん!」
サリーが僕の前に飛びだし、僕の手を握る。サリーもふらふらだ!
僕は力が抜け、その場に転倒する。
「走って! 走るのよ!」
サリーが僕を引き上げ、腰に手を回しなんとか僕らはよろよろ前に進む。
振り返ると、どんどん煙をあげながら光が近づいてくる。その光の前にはメイさんがいる!
「メ――――――――イ――――ッ!」
僕はあらん限り叫ぶ!
「キャアアアア――――――――ッ!」
メイさんは力無く僕達に右手を突き出すが、光に飲みこまれてしまった!
くっ! 何ていうことだ……
僕達は最後の力を振り絞り走る。体が重くて前に進まない。しかも挫いた足首が痛い。オートヒールも働いてない。
「うっ!」
サリーがよろよろとその場に膝をつく。もうすでに、僕らの10メートルくらい後ろには光が迫っている。
急がないと、光に呑み込まれてしまう。
「私ももう駄目みたい……マリーちゃんだけても逃げて……」
力ない笑みを浮かべ、消えてしまうような、か細い声でサリーが僕に囁く。
「サリー、駄目だ! 一緒に逃げるんだ!」
僕は声を振り絞る。
ドンッ!
サリーが僕を突き飛ばす。
「サリー! サリー! サリー!」
僕は這いつくばりながらサリーの方へ向かい手を伸ばす。サリーが手を伸ばせば届く所で僕は力尽きる。
「フフッ!」
サリーは手を伸ばさない。僕に慈母のような笑みを向けるとゆっくり光に飲み込まれていった。
「ああっ! サリ――――――――――――ッ!」
僕は歯を食いしばり、光に背を向け、少しでも前に進む。みんなの思いを無駄にしないためにも僕は逃げてみせる!
けど、悲しいかな、もう体が動かない……
僕は腹ばいのまま首を後ろに向ける。光がじりじり近づいてくる。僕の足、そして腿、そして腰まで光に包まれる。
ああっ、もう駄目か……
僕は目を閉じる。
しばしの静寂ののち僕は目を開ける。僕の腰で光りが止まっている!
僕は助かったのか?
光が収まり見渡すと、骸骨城のあった所には月明かりを照り返して、キラキラと光る砂山みたいなものがあるだけだった……
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