第五十話 迷宮都市の居住区
「お待たせ。どこに行くの?」
冒険者登録所の美人ドライアードのメイさんは、17時を少し回った所で、登録所の扉から現れた。今までに何人かの職員さんが出て来て、僕らは若干不審な目でみられた。メイさんは仕事中はスーツだったけど、今は私服で白いシャツと黒いスカートでOLさんって感じだ。
「僕達はここら辺に詳しくないから、お姉さんに任せるよ」
僕はキラに変身して、またマリーになる事でデブからいつも通りに戻った。多分、変身は鬼のようにカロリーを消費するのだろう。
「じゃ、ついてきて」
僕らはお姉さんについていく。因みにベルは大人しく孤児院に戻ると言って帰った。絶対に嘘だ! 間違いなくなんらかのえげつない妨害工作をしてくる事だろう。
しばらく歩くと木に鉄枠の扉に着く。使用頻度が高いのか、扉の表面はかなり摩耗している。扉を開けると、そこはドーム状のかなり広い空間に作られた、小さな町だった。
「ここは、地下1階の居住区よ、観光客や冒険者はほとんど来ないわ。ていうか来られないわ。行くのは私のお気に入りのレストランでいい?」
「ああ、任せるよ」
広めの路地から、小さな路地にはいる。建物同士は連結してるものも多く、ほとんどが似たようなレンガ造りだ。絶対に初めてきたら迷う自信がある。ウシオもサリーもキョロキョロしている。地下に降りる階段を下りると、そこはレストランが並ぶ地下街だった。その中の特に古いそうな建物に入る。
『マ・ラビリントス』
看板にはそう書いてある。多分「迷宮都市の母」という意味だろう。ここの町の家庭料理でも振る舞ってくれるのだろうか?メイさんに促されて僕達は中に入る。
「いらっしゃいませ」
落ち着いた感じの店内は少しうす暗く蝋燭の落ち着いた光で照らされている。シャツにベストに蝶ネクタイ、腰にはソムリエエプロンのギャルソンにエスコートされて、端の方のテーブルに座る。
もしかして、ここってめっちゃ高級なとこなんじゃ? 僕はサリーを見る。サリーはゆっくり頷いて笑う。勘定は大丈夫って意味だろう。やっぱサリー天使!
僕達が座ったのを見てギャルソンが口を開く。
「本日はご来店ありがとうございます。まずはアペリティフは何にいたしましょうか?」
ふっ、僕は知っている。アペリティフとは食前酒の事だ。今日は少し飲むか。
「ドライなスパークリングワイン1本とグラスを3つ、ガス入りの水をそちらのレディによろしく!」
サリーはお酒は飲まないだろうと思ったので、炭酸水を頼む。ガス入りの水とは炭酸水の事だ。炭酸水はご飯に合うからな。
どんな料理があるのか、わくわくしながら、メニューを開く。
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