第四十四話 地獄のトイレ
「実はトイレ行きたいんだ!」
「え、登録所にもあったじゃない」
「まじ?」
「まじよ! まじ!」
僕はトイレのマップにした木の棒を握って小走りだ。
運良くすぐに着いて、僕は男性用の扉を開ける。
「ちょっと待ったぁ!」
サリーが僕の手を引く。あ、つい間違った。
「私も少し行って参ります」
ウシオが男子トイレに入る。しぶしぶ僕は女子トイレに行く。これだけは、慣れない……サリーも付いてくる。女子つてなんか一緒にいきたがるよね。なんか恥ずかしい……
「分子分解……」
入るなり僕の横を光が通り過ぎる。光はサリーを包み込み、みるみる衣服が溶けて白い粉になる。
「黒ベル!」
サリーは叫び、僕の手を引き、扉を閉める。
「マリーちゃん! 大丈夫よ!」
見ると、サンドリバー特製ドラゴンエロ下着のサリーがいた。
「サリー、決して大丈夫じゃないと思う……」
布面積は狭く、胸は軽く先の方だけ覆っていて、下の前も最小面積しかない、少し透けていて、しかもお尻は紐で丸出しだ!
「そうよね、そういう気がしてた……これって裸と変わらないわよね……」
「いや、裸よりエロさは上だとおもうよ」
「………では、また、あとで」
サリーは真っ赤になって、胸とお股を押さえながら、僕の足下の影に入って行った。押さえてひしゃげた胸が揺れ、お尻も丸見えだった。いいものが見れた! 王子には今度うまいもんでも食わせてやろう!
「うっ!」
やばい! めっちゃトイレ行きたい!
中には黒ベルがいる。敵意がなかったら奴は襲いかかってこないはず! 僕は念じる。
僕はベルが大好き!
僕はベルが大好き……
これで僕の中のベルへの敵意は無くなったはず?
意を決して中に入る。
中では黒ベルが櫛でツインドリルを整えていた。なんかだるまさんが転んだみたいで、ときどきする。裸もでぶも嫌だ! 改めて思う、ベルって味方にしては役にたたないけど、敵に回したら死ぬほどやっかいだ!
黒ベルが僕を睨む。いかん、少しベルに関してマイナスの事を考えてしまった! 僕は黒ベルを見つめる。うん、極上に可愛い! 黒ベルは無表情になり、また髪をいじり初めた。
僕は胸をなで下ろし、扉を開いて用を足す。
ジョボボボ!
僕じゃない!
上から水が振ってくる。
多分黒ベルが上からホースか何かで水をまいてやがる! 小学生のいじめか! けど、平常心平常心。
「クスクス……」
僕の影の中から笑い声が聞こえる。
サリーたちだ! 人ごとだと思って!
「アウチッ!」
僕の足に何かがあたる。多分デッキブラシの柄だ。まじ、しつこい! 平常心平常心!
僕は流して外に出る。トイレはウォッシュレットだった。しかもめっちゃ綺麗だった。水をしたたらせながら外にでる。もうやだ! 走って逃げる!
ビチャッ!
頭になんかが飛んで来た。触ると茶色いねっとりとしたものが……
アンブロシアだ!
ぶちっ!
「やんのか! コラァ! ぶっ殺す!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ご主人様? どうなされたのですか?」
ウシオが僕から目をそらして問う。
扉から出た僕はデブかつ全裸だった。しかも何カ所か茶色いべったりしたものがついている。大事な所はなんとか隠しているが……
「クスクス……クスクス……」
僕の影の中からは押し殺した笑い声が聞こえる。
僕はやり場のない怒りにつつまれながら、シェイドの影の主をウシオにして貰って、シェイドの部屋に逃げ込んだ。
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