第二十一話 ギル王子の願い
「ここは、迷宮都市の最下層。私はここにたどり着いた者の望みを出来る範囲内で叶えてあげてます。1人1つづつ願いを言ってください。ですけど、正規のルートで来た訳ではないので、あまり過分なものは遠慮してください」
精霊女王のラファエルさんは、微動だにせず話す。なんかの魔法的なものだろう。生きてるのだろうか?
「俺と、俺と結婚してくれ!」
ギル王子が前に進み出て叫ぶ!
こっこいつは、誰彼お構いなしなのか?
精霊女王はなんて答えようかと困っているのか、何も答えがかえってこない。
「俺は、あなたに一目ぼれしました。いままで、あなたほど、美しい女性に出会ったことはないです! 俺の名前は、ギルフリード・サンドリバー! あなたを絶対に! 絶対に幸せにします!」
王子はうざいほどのジェスチャーを交え、情熱をほとばしらせて、最後に右手を差し出して跪く。
「お前、前に僕にも同じようなことしなかったか?」
僕は王子をじと目でみる。
「やきもちをやくな! ああ、安心しろ。俺はお前のことも大事に思っている!」
「やきもちなぞ、誰がいつ焼いた?」
こいつ、絶対いつか刺されるな……
「ありがたい申し出ですが、あいにく、わたくし夫がいる身ですので……」
え、こんな若いのにミセス? ぼそぼそと女王の声がする。今までこういう願いする馬鹿な奴いなかったんだろうな……
「オーマイガッ!」
王子はうなだれて動かなくなる。しばらくそのまま大人しくしててほしい。
「女王様に1つ質問がある。ここにきた者全てに願いを叶えて貰う権利があるのか?」
僕は精霊女王をじっと見つめる。
「はい、全ての者にです」
「言質いただきました! みんな出てこい!」
シェイド、イカ、マグロ、シャルが影から出てくる。これで願いはみんな合わせて9回叶えて貰える!
「作戦タイムだ!」
僕らのリーダーのアナの言葉でみんな集まる。
「僕は、孤児院に行きたい。あとは、みんなそれぞれ自由にお願いするでいいんじゃないかな?」
僕の願いはこれに最初からすると決めていた。それに、なんか女王は信用できない、ケチのような気がする。あくまでも勘だけど。
「女王! 僕達をサンマルコ孤児院に連れて行って欲しい。これが僕の願いで、あとの連中も出来る範囲でお願いします」
まずは僕が口火をきる。
「わかりました。ではこのあとで、孤児院に送りましょう」
心なしか、女王の声が明るくなった気がした。本当は、僕自身の事とか、女王と僕の関係とかも聞きたいけど、それは、また今度にしよう。あとは、このメンバーがどんなぶっとんだお願いをするか、楽しみながら眺める事にしよう!
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