第一話 転移装置
「それでは、ここでしばしの別れだな! 俺が役にたてるのはここまでだ! ついて行きたい所だが、城の整備とサンドリバーの復興があるからな」
魔神は僕に右手を差し出す。僕はそれを握る。
あれから1週間、まあ色々あったけど無事に戻って来れた。
ここは、転移装置室、もう修理は終わっている。幾つもの魔方陣があるが、2つだけ光ってる。
「1度に転移出来るのは4人までだ。あちらにはガルガンがいる。協力してくれるだろう」
ガルガンというのは、僕たちを魔神に売った学園の元先生だ。魔神同様、僕の仲間のハイエルフのベルに激デブにされてた人物だ。いままで完全に忘れていた。
まずは、転移装置の安全確認のため、王子が動作確認する事になった。どうしても自分がすると言って聞かなかったからだ。
王子が魔方陣に入って、しばらくしてまた現れる。問題無しだ。
まず、第1陣で僕、サリー、金カブ、モモさん、第2陣で王子、イカ、マグロ、アナで転移する事になった。移動手段と回復を考慮した組み合わせだ。
まずは僕達だ。転生前の事も少しづつ思い出してきて、ドラ○エの旅○扉が頭をよぎる。アリア○ンからロマ○アに向かった時の感動を思い出す。僕のパーティーは勇者、武闘家、僧侶、魔法使いだったな。今回のパーティーは、聖女、魔法使い、虫、戦士だな。結構バランスいいのではないか? 先に転移して、旅の扉の歌をハミングする。石造りの小部屋だ。雰囲気でてる。
「るーらら、るーら、るらららら! るーらら、るー、ららら!」
魔方陣から出て、待ってたら第2陣が到着する。少し安心する。石造りの部屋から階段を上がると、石造りの社があり、そこを出ると山の中腹だった。少し先に崩れかけた城が見える。まずはそこに向かう。警戒して歩いて行くが、キャタピラーは出てこなかった。崩れた城門をくぐり、中に入る。
城門をくぐったあとは、中庭で、そこでは10数匹のゴブリンが火を炊いて何かを炙ってた。多分魔獣の肉だ、謎のスープも炊いている。ぼろぼろの机に欠けた器が用意してある。食事の準備だろう。髪の毛を焼いたみたいな悪臭が鼻をつく。一応僕達は戦闘体勢にはいる。
「待ってくれ! ゴブリンを傷つけないでくれ!」
奥の方から声がした。テレビのナレーションみたいによく通る。奥から神輿みたいなのに乗った人物が現れた。ゴブリンたちが神輿をかついでいる。魔道士のローブに眼鏡、ぶくぶく太っている。その隣には、やたら着飾ったグラマラスでゴブリンにしては見た目が人間っぽい奴がいる。魔道士の嫁か?
「お前、ガルガンか?」
「いかにも、ドールマスターの名代、魔道士ガルガンだ! ここの城の城主だ、抵抗しないなら、歓迎しよう!」
「話だけなら聞いてやる! みんなとりあえず武器をしまえ!」
言って気付いたが、うちのメンバーは誰一人今のところ武装してない。みんな素手メインだ。野蛮人の集まりみたいだな、改善の余地ありだ。
「それで、貴様たちは何をしに来た? ここには金目なものは何1つないぞ!」
貧乏なのか? そんな誇らしげに言わなくても。
「僕達は傀儡魔神の転移魔方陣でこのそばまで来た。欲しいのは地理的な情報だ」
「それなら、一言で終わる。ここはテーブルマウンテン大絶壁のほぼ東のはてだ」
「マリー様、あたしの通って来た精霊女王の温泉はテーブルマウンテンの西南だから、峰沿いに南下したら着くはずっす!」
マグロが僕の隣に来て話しかける。それさえ解ればもうここには用はないな。ガルガンはここで、ゴブリンの王として楽しく暮らしているみたいだし。正直、煮込んでる鍋から出る悪臭が不愉快だ。ぶっちゃけるとうんこみたいな臭いがしている。
「ガルガン! 達者で暮らせよ! じゃ行くぞ!」
僕達は、城を後にした。ガルガンに対する少しのわだかまりは霧散した。いましめられすぎだろ……
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