第三話 変身
「おいっ! 大丈夫か目を覚ませ!」
ジェフに荒々しく肩を揺らされてる。兜が揺らされてずれる。何だ? 急に兜が大きくなったのか?
僕は……何をしてたんだろう。視界には白いもやがかかっていて、頭が寝起きみたいにあんまり働かない。
確か、ドラゴンを倒して、ジェフとハイタッチして、みんながなんか言ってたのは思い出せる。
ガコン!
手甲がするりと抜け落ち音をたてる。なんか服のそでがだぶついている。
そうか、鎧兜が大きくなったんじゃない。多分僕が小さくなったんだ。それにしてはおかしな事に胸にだけやたら圧迫感がある。正直苦しい。
まずはぶかぶかの脚絆を外し、腰甲を外す。ズボンもぶかぶかなので、紐をきつく閉めて裾を捲る。それでも大きい。
僕の体に何が起こったんだ?
体に装備しているのは、鎖鎧の上の人体の要所に板金をあしらったものなのだが、今の僕には正直重くて動くのにさえも難儀する。しかも、どうもとても力が弱くなったみたいで、鎧を脱ごうと思うけど、固定している留め金が外せない。指先がプルプルして力が入らない。困った事に兜も同様で外す事が出来ない。
諦めて重い体を起こし、なんとかふらふら立ち上がる。
「なんだぁ? キラ、なんか小さくなったな、なにが起こったんだ?」
ジェフが僕の頭に手を置く。兜がずれて見えなくなる。見えるように位置を戻すと、ジェフを見上げるかたちになる。
「僕も解らない……」
「なんだぁ、その高い声、なんか女みてーだな」
ジェフはまじまじと僕を見る。
「魔法が発動した気配はなかった」
ヘルメが近づいてきて、僕の袖をめくり手を触る。
「細い腕、無力、子供? キラ、剣を」
ヘルメはひとしきり触ったあと、僕の剣を拾い差しだした。受け取るがボトリと取り落とす。
「何が起こったか、解らないけど、もうキラは戦えない」
ヘルメは僕に興味を失ったのか、宝箱の方へ行く。
「ちょっと、ちょっと、どういう事? わたくしのキラ様は弱くなったのかしら?」
イリアは僕に近づくと金切り声を上げ、僕の両肩を掴み揺さぶる。
「なにこれ、こんなのキラじゃないわ!」
そういうとイリアは僕を突き飛ばした。たたらを踏んだがどうにか転ばずにすんだ。
そしてジェフはゆっくりと口を開いた。
「あばよ、キラ、役立たずになったお前は追放だ。これで金輪際、お前と『セイクリッドマローダー』は無関係だ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ヘルメに投げ込まれて、僕が転移したのは小さな部屋だった。良かった、壁の中とかじゃ無くて。
僕には何が起こったのだろうか?
今の格好は、兜と胴鎧に鎖帷子、どちらもまた試してみるが非力さ故に外せない。
装備も服もぶかぶかだけど、何故か胸が窮屈、背丈は多分ヘルメと同じ位、子供にでもなったのか?
胸の所を上から叩いてみる。なにかがぎっしり詰まっている? しかも、変な感触がある。おっぱい?
!!!
僕は、嫌な予感がして、僕の股間に手をあてる。
無い!
僕の未使用のロンギヌスが無い!
「のおおおおおおおおーっ!」
高い声に非力な小さな体、張り裂けんばかりの胸、そして失われた新品のロンギヌス……
認めたくないが、多分僕は女の子になったのだろう。
いやらしい気持ちではなく、確認のために股間を触ってみる。
何をやってるのだろうか。鎧にフルフェイスの兜で、股間をいじる女の子?
今の僕は他人が見たら確定変質者だな……俗に言う痴女というやつか?
確定だ、さすがに目視は僕のDTメンタルでは出来ないが、確かに女の子だ。女の子してる……
ああ、彼女が出来る前に女の子になるとは……
確かに僕は女の子が大好きだ。3度の飯より大好きだ。ああ、良かった。僕は大好きなものになれたんだ。ってそんなことあろかい! 1人ノリツッコミしながら考える。こんなになるんなら、修行に明け暮れるだけじゃなく、頑張って彼女作ればよかった。
僕は、理不尽極まりない今の境遇を忘れ、しばらく打ちひしがれた……
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