第一九話 空の旅
「お前ら、くっつくな! くっつくな!」
右手にサリー、左手にモモさん、後ろからアナが抱きついてくる。子猫が密集して寝てるみたいなじゃれ方だ。
とってもしあわせハーレム状態だけど、残念な事に僕は女の子だ。切にいつの日か、男の子状態でこうなって欲しいものである……
「いいなぁ……」
アルスが呟く。くっつくのとくっつかれるのどっちがいいのだろうか?
最後にシェイドが前から来て、もう、訳のわからん状態になる。なんか愛情表現が激しいな……今日は。
ひとしきりじゃれ合った後、僕は外に出て、王子と交代する。サリーも出てくる。
「グフフフ! 昨日は命びろいしたみたいだな!」
でぶ魔神がニヒルだと自分では思っているであろう笑い方をする。
「お仕置きが足りんようだな! 豚野郎!」
「勘違いするなよ! お前たちが強いから従ってるだけで、もっと強い奴が出てきたら、即座に鞍替えするからな!」
こいつはうんこだな!
けど、魔領に行くためにはこいつの力が必要だ。ちなみに昨日の危険なおもちゃは、僕の収納に回収してある。サクラからはサリーが回収した。
見渡す限りの雲海の中イカに吊られて浮かんでいる。上の気持ち悪いイカさえ見えなければ最高なのに……イカ臭いし……
金カブは悠々と前を飛んでいる。いつの間にか、その頭にはアナが乗っている。あいつがいないだけで、何事もスムーズにいく。
今は、僕と魔神とサリーだけがイカに吊された籠の中にいる。魔神もいなかったら更に気分いいのにな。
「やっぱコイツここから捨てたがいいんじゃないの? あと少しで、マリーちゃん王子の嫁さんになるとこだったし!」
サリーがうんこを見るようなハイライトの無い目で魔神をみている。
「そうだね、荷物が軽くなったら目的地に着くのも早くなりそうだし、モモさん」
影の中に呼びかけてみる。即座にモモさんが出てくる。待ってたのか?
「なーに?」
「これ、捨てて、触りたくないから、でぶがうつりそうで!」
サリーが、魔神を指差す。
「了解! タイタン・ハンズ!」
モモさんの傍らに現れた巨人の手が魔神を掴む。
「止めてくれ、死んでしまう! わかったわかった。何でもする。それで、何が望みだ!」
何でもするって、こんなヤツに言われても嬉しくないわ。けど、そうだな。
「物わかりがいいやつだ。お前の知ってる事を全て話せ! あと、持ってる魔道具を全部だせ!」
僕は魔神を睨みつける。こいつは、まだ、何か隠してそうだ。
「解った! だから、助けてくれ!」
「モモさん! 許してやれ!」
「わかったわ!」
えっ?
モモさんは、巨人の手で、魔神を遠くに放り投げた?
「ギャアアアアアアーーッ!」
魔神の悲鳴が響き渡る。
「あ、ごめんなさい、つい汚いから捨てちゃった!」
気持ちはわからないでもないが、魔神むごすぎる。
魔神はなんか叫びながら、放物線を描いて遠くに消えていった。
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。




