第十六話 聖女の危機
ガチャリ!
扉が開く音がする。
「ん、なんだ、誰かいるのか?」
ゲッ、王子だ!
灯りをつけて近づいてくる。
「愛しの王子様おまちしておりましたわ!」
僕の意思を無視して言葉が紡ぎ出される。鼻にかかった甘ったるい声で……
うおおおおおおーっ!
気持ち悪くて寒気がする!
「なんだ、ここにいたのか。酷い目にあった。顔は叩かれるし、尻は蹴られるし、本当に凶暴だな、お前の仲間は」
こいつ夜這いに行ったんかい!
自業自得だろ。
「ごめんなさい。あとでしっかり言っておきますわ」
僕は意思に反して身を起こし頭を下げる。
アホに頭下げるなんて、屈辱だ!
けど、流暢に話すな、マリオットの僕。サクラは女言葉の練習でもしているのだろうか? 相変わらず気持ち悪い奴だ。さすがゲイボーイ!
「それより、お前、こんなところで何をしている?」
「今度の大会が待ちきれなくて! 王子様の優勝は間違い無いと思いますけど、万が一を思うと、心が張り裂けそうで……」
にゃー!
まじ、甘ったるい!
ひー!
鳥肌が怒濤のごとく襲いかかる。
僕は意思に反して立ち上がり、王子に近づく。王子の顔には真っ赤な手形が……
サイズからみてアナの仕業だろう、容赦ないな。
王子は僕を抱きしめる!
気持悪い!
誰か助けてくれ!
僕は涙が溢れだす!
「涙……そこまで、俺の事を……安心しろ! 俺が優勝する! それまで我慢してくれ!」
王子は僕をひとしきり強く抱きしめると手を離す。
「じゃ、おやすみ! またな!」
王子は僕に背を向ける。お、いいとこあるじゃん。少しだけ見直した。
「まって!」
僕の口から呟きがもれる!
止めてくれ、せっかく逃れたと思ったのに!
シュルッ!
僕はメイド服を脱いだ。
よかった下着つけてて。
王子が振り返る。そして、僕たちは見つめあう……
ヤバイ!
誰か助けてくれ!
考えても考えても逃れる方法が思いつかない!
これまで、いろんな危機を乗り越えてきたが、今回が一番やばい!
王子が近づいてくる。恐怖で涙が滂沱と流れる!
「そんなにも、俺の事を……」
違う!
お前が怖いんだーっ!
動け僕の体!
動いてくれ!
やった! 動いた! いや、背中のブラのホックに手が伸びる!
動くな! 動くな僕の体!
八方ふさがり万事休す!
涙がとめどなく溢れる!
ああ、僕は変態王子嫁になってしまうのか!
抵抗虚しく、無情にも僕の手がブラジャーにかかる!
王子が期待に溢れた目で僕を見ている!
「はい! 終了! スタンジャベリン!」
僕の後ろからシェイドが現れて、王子に魔法を放った。
王子はゆっくりと後ろに倒れて行った。
ああ、助かった……
「ディスペル!」
シェイドの魔法が僕にささる。動く! 体が動く!
「ウワァァアァァア! シェイド! 怖かった!」
「今は、サリーよ!」
僕はシェイドと中身が交代してるサリーにしがみついて滂沱と泣きじゃくった。
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