第四話 重騎士団全軍突撃
「全軍突撃!」
「「オオオオオーッ!」」
ギルフリード王子の号令に重騎士団が鬨の声を上げる。
そういえばサンドリバー騎士団の命令、突撃以外聞いたことないな。
ドドドドドドドドドドドッ!
重厚な音をたてながら騎士達は進んでいく。
おいおい、あいつらどんだけ重い鎧着てるんだ?
しかも恐ろしい事に、今までそれで全力疾走してたのか……
カメラ? が引いて俯瞰でサンドリバー全軍を捉える。
更に引いていくと、重騎士団の前方に武装した大軍が現れる。
そちらの方を今度はズームする。トカゲの頭に尻尾が生えていて全身が鎧のような鱗に覆われてる。リザードマンだ。盾と槍を持っている。
「魔領から引き連れてきた、リザードマンだ! 鱗は鉄の鎧に勝り、膂力は人間を遙かに凌駕する!」
肥満野郎がどや顔で口の端を上げる。
太る前だったらイケてたかもしれないが、今はただキモい!
また、カメラが引いて、上空から全軍を捉える。
客観的に見ると、重騎士団が圧倒的に不利に見える。リザードマン軍の右翼と左翼が突出し、騎士団を囲むように進軍する。包囲して殲滅するつもりだろう。
重騎士団は怯む事無く一定のスピードで進み、ついに戦闘が始まる。武器があたる乾いた音が聞こえ始める。しかし、王子率いる騎士団その進軍は速度を緩める事無く、リザードマンの軍をひた突き進む。
カメラが近づき、その戦いを捉える。戦いにすらなってなかった……
進む重騎士をリザードマンが槍で突く。全く何も無かったかのように重騎士は進む、そして目の前に立ちふさがったリザードマンを殴りとばし、何事も無かったかのように、それを踏みつけてドカドカ歩く。
「な、なんだあれは!」
デブが細い目を見開き画面に食いつく。
「サンドリバー重騎士団。この世で1番たちが悪い騎士団だ……」
僕は吐き出す様に答える。
「そんな馬鹿な! 俺様のリザードマンが……」
魔神は驚愕で目を見開いている。
「多分ね、あいつら1人でリザードマン三千人位の戦闘能力あると思うよ……」
僕は可哀想になって、できるだけソフトに事実を伝えてやった。
「ハハハッ! 所詮、人間の騎士! リザードマンの本領は湿地帯で発揮される! くらえ泥沼の杖!」
デブがどっからか出した杖をかざす。杖から出た光が画面に吸い込まれる。画面の中の乾燥した大地が、みるみるうちに柔らかくなり、サンドリバーの騎士達は地面に沈み込んでいく。リザードマンはその柔らかい泥土の上に立っている。軽装でしかも何らかのスキルを持っているのだろう。
画面の中にはもう重騎士団は見えなく、ただリザードマンたちが勝利の雄叫びであろう奇声を上げていた!
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