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 第三十二話 大人の交渉


「ゴーレムは魔法消去の魔法で倒した」


 僕とサリー、学長の爺さんは会議室みたいな所にいる。


「え、なんじゃと?」


「だから、ディスペルマジックだよ!」


「それくらいはわかるわ! あのゴーレムはデザインからしてかなり古い時代のものだと思われる。昔の物はかなり高度な魔法で作られてたり幾つもの結界でまもられてたりして、そう安々と魔法を解除できんのじゃ!

 現に、ゴーレムやガーゴイルとかの魔法生物をディスペルで一撃で倒したって話聞かんじゃろう。物理的に可能でも、能力的に無理なんじゃ!」


「学長先生。それは解りますけど、マリーちゃんなんです」


「え、マリーちゃん?」


「よくよくみてください!」


「あ、化け物。全体的に」


 学長は僕を、特に胸を凝視する。


「おい! じじい! どういう意味だ!」


「それは、マリーちゃんに壊せない魔法は無いって事じゃよ。それよりも、と言うことは、あのゴーレム無傷なのか? 魔法を込めたら使えるはずじゃな」


「やっと、本題に入れるな。ここでの買い取り価格は叩き過ぎだろう。絶対に買い取って損しない金額でやってるんだと思うが、まあ、それは悪い事じゃない、学園、お金食いそうだからな」


「何が言いたいのじゃ?」


「じじい、あのゴーレムの買い取り価格はいくらだ?」


「大金貨千枚じゃな」


「よし、サリー税金払ってやれ、サリーお金貸してくれ、さっきの金額と貯金で百枚あるよな」


「おっけー。マリーちゃん」


 サリーはにこにこお金を出した。テーブルに大金貨を積む。僕が何をしたいのか薄々勘づいてるはず。


「行くぞ。サリー」


 僕は立ち上がる。


「まて、何処に行く気だ?」


「勘が鈍い爺さんだな。本当に学園のトップなのか? 飾りなんじゃないのか? 売りに行くんだよ、このゴーレムを他の国に」


「待ってくれ!」


 爺さんは僕にすがりつく。


「大金貨一万枚だ」


 爺さんが固まる。


「高すぎだろう! もう少しなんとかならんのか?」


「じゃ、交渉に入ろうか、学長先生まずは座ろうか」


 学長が座るのを待つ。


「今までの非礼は詫びる。けど、子供だと思ってのなめた態度は控えてもらいたい。これからは、僕も真面目に話すから、学長先生も嘘や隠しごとは無しでお願いしたい」


「わかったのじゃ、わしが答えられる範囲ならいいぞ」


 まだ、爺さん余裕があるな。さすが海千山千、年とってるだけはある。知ってる事全部は話さなさそうだ。もう一押しいきますか。


「もし、仮にだ、あのゴーレムが学園に攻撃してきたらどうなる?」


「そうじゃな、倒せる者が思いつかんな?」


「逆に、あのゴーレムが学園を守ったらどうなる?」


「誰も突破出来ないだろうな?」


「と言うことは、近隣の国に僕がゴーレムを売ったら、聖都はその国に併合される可能性があるという事だな。逆に学園に売ったら、鉄壁の学園都市の名が更に広まるって事だな。爺さん、答えられる範囲でいいのか?」


「…………」


「マリーちゃん、学長先生はいい人よ、あんまり追い込んだら可哀想よ」


「サリーがそう言うならいい人なんだろうね。僕は学生としては、先生を敬うけど、今はビジネスだから対等な交渉をしたいんだ。僕たちがもってるカードを軽視してるみたいだから冷静になってほしくてね」


「わかった。わしが知ってることは全て話そう……」


 やっと、折れたな。これで色々な事を聞けそうだ。


 読んでいただきありがとうございます。


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