第十七話 金色の姫騎士
「アナ! かかってこい! おらぁ!」
僕は金色のカブトムシの上からイキって叫ぶ!
視点が高いので、辺りが見渡せて気持ちいい。
まあ、もっとも戦うのは僕じゃないが。
金カブは仁王立ちしたアナの前で立ち止まる。
「戦神降臨100%」
金色のまばゆい光がアナの体の包み込み、光が収束して鎧となる。偉い人とかの家にかざってある彫刻が着てるような格好で、出来がいいコスプレみたいだ。けしからん事にその胸が大きくなっている。アナは両手を伸ばし、そこには2本の槍が出現する。
やっちまった……
アナは戦いの神をその身に降臨させる事で戦闘能力を飛躍的にアップさせるが、100%になると激しく暴走する。
あ、いつも暴走してるからあんまり変わんないか。
「わたくし降臨! アレス100%見参!」
アナはその場でひとしきり踊ったあと構える。
その神々しさに、見ている者からため息が漏れる。
いつものノリで脱ぎ出したりしたらどうしようかと、僕はヒヤヒヤだった。聖都で流行った100%を冠するコメディアンさんみたいに。お盆じゃなくて槍でそれをやったら色んな意味でまずいと思う。なにも隠れないよ。
金カブはお利口に踊り終わるまで待ってた。こいつほんとは中に人間入ってるんじゃないのか?
僕たちはしばし、対峙する。
張り詰めた空気があたりを支配する。
キィーーン!
つららが割れたような澄んだ音をたてて、アナが落とした2本の槍が砕け散る。アナはその場に崩れ落ち地に両手と膝をつく。
「おおっ!」
学生たちから感嘆の声がもれる。
アナは鎧もスカートタイプなので後ろのギャラリーからはパンツ丸見えなのでは?
こいつにもスパッツはマストアイテムだな。
「ああ! 出来ない! 私には出来ない! こんな可愛らしい生き物と戦う事など…」
こいつの可愛らしいの基準はブレすぎなのではないだろうか?
こいつによく可愛いって言われてる僕の立場はどうなるのだ? こいつの中では僕とカブトムシは同レベルなのか?
「お前! 馬鹿なのか? ゴキブリはOKでカブトムシはNGって、訳わかんねーよ! 立て! 立って戦え!」
僕はアナに向かって叫び続ける!
せめて一瞬くらいは戦って欲しい。
なんてったって面白そうだから!
「無理だ! 私には無理だ! 金色のお揃いだし他人の気がしない!」
アナは両手で地面を叩く!
「おい、お前は虫の仲間なのか! 確かに、頭の中身は虫並みだしな!」
自分で言って、納得してしまう。
かくして、黄金認識票の冒険者、戦神を宿す姫騎士アナは金色のカブトムシに敗れ去ったのであった……
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