第二十五話 水浴び
僕は体についてる血で汚さないように、ベッドにタオルを敷いて座る。
目を閉じて、大きく深呼吸する。
タオルをタライにつけ絞る。今の僕の腕力では、正直ひたひただ。左の手の届く所に透け透けの下着を置く。穴あき下着はどうしよう? 捨てるのも外聞的に嫌だ。誰かに捨てたのを見られたらビッチ扱いされそうで。
僕は目を瞑る。僕のレベルではまだ早い。目を開けてたら、こんどは鼻血の海に沈む事になるだろう。駆け出しの冒険者が、ドラゴンに挑むようなものだ。しかも普通のドラゴンでは無い。齢を経て強大強力になった成竜いやもしかしたらさらに成長した古竜かも知れない。
ブラジャーをもたつきながら外しショーツも脱ぐ。生まれて始めての経験なので難易度が高かった。パンツとショーツ、正直同じ言葉ではあるらしいが、パンツといったら白に小さいリボンがついたヤツや、縞パンなど可愛いのを連想するが、ショーツと言ったらなんかヒラヒラでエッチなイメージがある。
ベッドの縁に座ってから、濡れタオルで優しくふきふきする。まずは左手、持ち替えて右手、ひんやり気持ちいい。ううん最高!
しかも、ぷにゅぷにゅだよ僕の手。タオルを絞り直して座って両足、つぎは背中を攻める。
「ゴクリッ!」
意識してないのに、ツバを呑み込んでしまう。その音が、目を瞑ってるせいで、とっても大きく感じる。
僕のいままでの人生最大の難関だ! チョモランマとK2を連続登頂する前のような気分だ。山登りはした事ないけど。
まずは、お腹の方から下から軽く持ち上げるように、たぷたぷ汗を拭いてみる。
スライムが一匹!
スライムが二匹!!
目を閉じているせいで、感覚が研ぎ澄まされてる。
よく、彼らは壊れないプリンに例えられてるが、何と言うのだろう、もっと弾力がある。
水風船? いや、それは失礼だ。もっと柔らかい。クッション? いや、もっと弾力がある。
そうだ、スライムはスライム!
今はそういう事にしとこう。
なんか、とってもくすぐったい。言うなれば、脇をこちょこちょくすぐられているような……
若干、頭の中がチカチカしてきた。あかん、目眩もする。
顔が熱い気もする。
これはやばい! 我慢できない!!
タオルを絞り直して、首まわりを拭く。ちょっとヒヤッとするが、最高に気持ちいい。どうしてもたまにスライムに触れ、そのたび硬直する。
ああ、僕はスライム二匹とすら、まともに闘えないのか……
伝説の英雄など、夢のまた夢……
……ところで、僕は今何してるのだろう……
突然我に返る。ベッドに裸で座って、自分のスライムと戯れてる。
客観的に考えると、英雄とは程遠い所にいるのではないだろうか……
「フフッ、キャハッ、フッ、フフッ、キャハハッ!!」
くすぐったくて、どうしても声が出る。意を決して、乱暴に回すように両胸を拭いている。
やばい! めっちゃ柔らかい!
僕の貧困なボキャブラリーでは例えられないので、今後はいろんな柔らかいものを触って、感触の近いものを探しだそう!
しかも奴らはでっかい、二つ合わせたら僕の頭より大きいのではないか……
変な感じになる前にさっさと終わらせよう。
次はお尻、ここもやばい! めっちや柔い!
次はお股、未使用のロンギヌスが無い事を嘆きつつ、ここは僕的にもっとやばいので、何も考えないように拭きあげた。
下着を着けて目を開ける。自分の体を出来るだけ見ないようにしながら服を着る。おへそ丸出しだ。お腹を壊さないか心配だ。チューブトップにショートパンツ。普通の女子だとボーイッシュなんだろうけど、僕が着るとやばい。スライム君達が暴走しないか心配だ。
ロザリオと、マリーの認識票を首にかける。認識票をじっと見る。
昨日までは、第一線の冒険者として活躍していたのに、木の認識票に逆戻りとは……
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