第二十四話 お着替え
ちゃぷん!
水のはいったタライにタオルを浸して絞り、僕は顔を拭いた。その少しの動きでも、胸がぶるんぶるん揺れる……
乾いたタオルで血はあらかた拭ってたけど、タオルにはびっとりと血がついた。アルスの吐き出した血だ。ツンとした臭いが鼻をつく。
汚れたメイド服を脱いで、今は下着だけの状態だ。こぼれそうな胸が見えるが出来るだけ視界に入れないようにする。母さん以外の女子とはほとんど接点のなかった僕にはハードルが高すぎる。
今僕は宿屋にいる。あのあと、足が治ったので、とりあえず、悲鳴をあげまくって逃げた。
アルスとモヒカンズは、まあ、衛兵にでも捕まってる事を祈る。助けて貰ってなんだけど、アルスは危険すぎる。アナ達同様にかかわりたくない。僕は収納からタオルを出して、血を拭いながら、出来るだけ人が多い道を逃げた。やたら、目立ったが、なんとか宿をとり、今に至る。
見渡すと、払ったお金よりも格段にいい部屋だ。全体的に小綺麗で、絵画などの装飾品もある。タライに水を頼んだら、大きめのタライ2つ持ってきてくれた。やたら大勢で持ってきてくれて、多分、この宿の男性全員だったのでは? 全く僕は罪作りな女だな。
お水は普段だったら有料のところ今日はサービスらしい。他にもなにかしましょうかって言われたけど、出て行ってもらった。
次は借りた手鏡で、自分の姿を確認してみる。
可愛い! とっても! 自分の予想を遙かに上回っている。これはいかん。僕は僕にしばらく見とれてしまう。
よく見るとブラジャーにも血が付いていた。立ち上がり、壁に手をつくと壁に黒い穴が開く。そこから出たトランクの取っ手を掴み引きずりだす。穴はトランクの大きさに広がり、出尽くしたら消える。僕の収納魔法は、空間に穴を開けて出し入れするタイプで、どっからでも出せるのだけど、壁や床を使った方が安定する。
トランクを開けて、何を着るか悩む。諦めて下着は紫の透け透け、服はチューブトップとショートパンツにする事にした。
「………!」
やばい、今までは気にならなかったが、女の子の服を触るって初めての気がする。それだけで、なんかほっぺたが熱くなってクラクラする。
僕は両手で透け透けの下着を広げる。
「……母さん……」
僕はつい呟く。悪ノリしすぎだろ。この下着、つけてもなんもかんも丸見えだ。早く新しいまともな服が欲しい。
「うっ!」
ぽた、ぽたっ。
温かい鼻水が出たと思ったら、つつーっと垂れ、床に赤い液体が……。ああ、せっかく拭いた顔が……
タオルで顔を抑え、床を拭いて、鼻血が止まってから、次はベッドに服を広げる。巨大な何かがぶりんぶりん揺れて邪魔だが、精神衛生上気にしないようにする。何も無い、何も無いんだ。
なんか母親の悪意を感じるが、気にしたら負けだ、調子に乗らせるだけだ。
人は今持ってるものだけを武器に生きてくしかない。もっとも、妙な勝負下着を武器にはしたくないが……
ドクン! ドクン!!
また、心臓の鼓動が速くなる。着換える前に、僕の人生最大の勝負が、待っている。
変な汗かいたから、体を拭きたいのだ!
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