第十話 演舞
「サンドリバーよーい!」
王子が手を後ろに組んで大声で叫ぶ!
まだこいつら何かするのか?
早く帰りたいよ、みんな僕を心配してると思うし……サリーとモモさんの顔が頭に浮かぶ。マッチョ嫌だ。もう見たくない。
重騎士団は綺麗に正方形に整列する。今からしようとしているサンドリバーって何なんだ? 嫌な予感しかしない。
「サンドリバー初め!」
全員横を向く。
地響きが起こる。
足を大きく開き走るような構えを取る。
「サーン、ド、リバー!」
王子が力強く前後に交互に両腕を振る。
「「「サーン・ド・リバー!」」」
騎士団全員、王子同様に力強く両腕を振る。一糸乱れぬ動き。コイツらどれだけ練習してきたんだ? 凄い練度だ。そんなのの練習する暇あるなら戦う練習しろよと思う。
「「「サーン、ド、リバー! サーンド、サーンド、サーンドリバー!」」」
全員で大合唱しながら腕を振る。空気がビリビリ震える。なんだコレ? いつの間にか全員上半身裸だ。もっとも真っ赤なブーメランパンツだけの奴もいるが。
これ、昔見たことあるわ。たしか日本体○大学のえっ○っさとかいうやつだ。誰か転生者がもってきたのか? 多分ここの風土にベストマッチだったんだろうな。
全員、全身に汗をかき、力強く腕を降り続ける。力の限り叫んでいるのが、彼らの首筋に浮かんでいる血管から伺える。
「お前も参加しろよ! お前、男なんだろ!」
僕は隣でうっとりして岩に腰掛けてるサクラに言う。
「私は人前で裸になるのは好まないんだ。ただ王子を見てるだけで十分だ」
視線の先のギル王子を見る。パンツ一丁で満面に笑みを浮かべ汗をほとばしらせている。気持ち悪い! あんなのの何処がいいんだ? まあ、みんなでやってるからなんぼかマシだが、アレ、そこらで1人でやってたら問答無用の変質者だろう。
僕には王子は汚れ芸人にしか見えない……ぱっと見イケメンなだけに残念さがハンパない。
「気持ち悪い事いわんで、さっさ脱いで踊ってこい!」
「やめろ! やめろ! キャッ!」
剥いてやろうとするが、こいつの方が力が強いので諦めた。
ああ、早く帰りたい……
何が悲しくて男共の裸をみにゃならんのだ!
そうこうしてると、僕たちを乗せてきた馬車部隊が戻ってきた。やっと帰れると思いきや。御者のおっさんたちも演舞を見ると興奮し、脱ぎ始め参加する。
「参加すなや!」
ついつい叫んでしまう。
ああ、嫌だ。サンドリバー……
夢に見そうだ。
早く帰りたい。サリーやモモさんで癒されたい。
それからも、しつこく演舞は続いていった……
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。




