第九話 勝利の余韻
「倒した! 倒したぞ! サンドリバー重騎士団はドラゴンを退治した! サンドリバーの鎧は世界一だ!」
王子は槍を手に空を突く!
けど、鎧無くなってるよ……
「オウッ! オウッ! オウッ! オウッ!」
王子は赤いブーメランパンツ一丁で槍で空を突く。
「「「オウッ! オウッ! オウッ! オウッ!」」」
それに合わせて騎士たちから激しいコールが巻き起こる。
正直、鉄を溶かすドラゴンの炎にも耐えきったそのパンツが欲しい!
世界一なのは間違いないなく鎧でなくパンツだろう!
彼らは飽きるまで、おうおう言っていた。オットセイかよ。真っ赤なブーメランパンツの槍を一本持った美丈夫の周りに、ガタイのいい男たちがぞくぞく集まってくる。ここだけ見るとヤバイイベントにしか見えない!
鎧の脱げかけた奴、脱げた奴、真っ裸な奴、様々なマッチョマンたちが集まり王子をもみくちゃにして胴上げを始めた。
もはや地獄絵図だ!
「「ギールフリード!」」
「「ギールフリード!」」
「「ギールフリード!!」」
なんて激しい感情表現なのでしょうか?
僕は遠巻きに岩に座って収納から出したコーヒーなど嗜んでた。僕は祭りとかは参加するより、遠くで楽しんでるのを見る派なのだ。
「次は我らの宮廷符術士サクラ殿! 彼の符術なくしてサンドリバー重騎士団はあり得なかった!」
騎士団長が叫ぶ! ご愁傷様。頑張れよ。
「キャアー!」
サクラの叫び声がマッチョ達に埋もれる!
ホモセクシャル冥利に尽きるだろう。
あばよ、よかったな!
「「サクラ!」」
「「サクラ!」」
「「サクラ!」」
おうおう、めっちゃ飛んでるやん!
ん、白目剥いてないか?
嬉し過ぎたのか?
そしてしばらくしてサクラは開放された。放心状態で地べたに座っている。
「次は、我らの聖女マリーさん!」
ぶぶっ!
僕はコーヒーを吐き出す。
まじか! 勘弁してくれ!
全てのマッチョたちのギラギラした目が僕に集まる!
怖い!
怖すぎる!
「グラビティ・ゼロ! 嫌だ! 助けてくれ!」
僕はダッシュで逃げ出す。
「符術! 魔力散華! これでしばらくは、魔法やスキルはつかえない! お前も道連れだ!」
見るとサクラが放った呪符が飛来し僕の背中に貼り付く。体が重くなり走るのが遅くなる。
「サクラ! 今じゃなく、ドラゴン退治で活躍しろよ!」
「私だって必死で戦っていた! 目立たないだけで! ドラゴン弱くしたり、味方を強くしたり……」
サクラは女の子座りで人差し指をつんつんしてる!
今時、女の子でもそんな仕草しねーぞ!
ガシッ!
僕の手を誰かが掴む!
ブーメランパンツの変質者だ!
「失せろ! 痴漢!」
「痴漢じゃねーよ! 歓迎されてこい!」
王子は片手で僕をマッチョマンたちの上に放り投げる!
こいついつか泣かす!
泣かしてやる!
「尻や乳を触った奴は飯抜きだ! 紳士的に胴上げして差し上げろ!」
団長の声が響くのを空中で聞く。
「「了解!」」
「キャアアアアー!」
僕の甲高い声が辺りに響く。
「「マリー!」」
「「マリー!」」
僕は胴上げされている。初めはスカートを押さえていたけど、胸がぶりんぶりんして痛いので両手で胸を抱く!
残念ながらパンツ丸見えだろう……
「「マリー!」」
「「マリー!!」」
「キャッ! 今、尻掴んだ奴! 出てこい!」
「「マリー!」」
「「マリー!」」
僕はしばらく胴上げされ続けた……
ちなみに僕のお尻を触ったのは変態王子だった。
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