第五話 ライク・ア・ローリングストーン
「ハンズ・オブ・ヘカトンケイル!」
モモさんの叫びと共に、数多の巨人の手が現れ僕たちを隙間無く覆う。カツカツ音がする。矢が当たってるのだろう。助かった。何とかハリネズミにならなくて済んだ。闇の中、モモさんの手をしっかり握る。そう言えば、シェイドはいるのだろうか?
「シェイド!」
返事は無い。こっちには来てないみたいだ。
「シェイドって何?」
「仲間だ。いないみたいだ」
モモさんに答える。カツカツ音が途切れない。
「私の巨人の手は、手の届く範囲でしか攻撃できないわ。ということは、いくわよ! 気を付けて!」
僕は、闇の中、床みたいなものが動いてお風呂から出される。多分、僕たちのまわりを巨人の手が球状に覆って回り始めたのだと思う。なんか、こういうアトラクションあったな。
「名づけて、ローリング・ストーンハンズ!」
モモさんがコピーバンド見たいな名前を叫ぶ。僕たちはぐるぐる回る。
「モモ! 駄目だ! 目が回る!」
ロロが叫ぶ! 誰かが僕に抱きついてきて、タオルを取る。
「誰だ! 何しやがる! 揉むな! 揉むな!」
誰かが僕の胸を揉む! ロロだな! 回ってる中、僕に触れたタオルを思いっきりむしり取る!
「ロロ! お返し! フグッ」
ふにょん!
顔に柔らかいものが押し当てられる! しかも口を開けてたので、吸い付く様な形になる。咄嗟に抱きついてしまう! この大きさもしかして!
「ヒャウン! 駄目……止めて……力が抜ける。集中切れたらバラバラに投げ出される……」
ぐるぐる回るなか、モモさんが小声で途切れ途切れ言う。僕に押し当てられてる柔らかいものがぶるぶる震えてる!
今日は、僕の記念日だ!
一生今日の事は忘れない!
ありがとうモモさん!
けど、投げ出されるはやばい!
僕は強引に顔をずらす。
「ヒャッ!」
モモさんが悲鳴を上げる。顔をずらすときに擦れたからだろう。
「お前! どさくさに紛れて、モモに何しやがる!」
ロロらしきものがじたばたして、僕とモモさんの間に強引に体を捻じ込んで来る。
「あっ! タオルが! 取れる!」
「お前! 何やってる! 脱ぐな! 脱ぐな! 洗濯板っ!」
ふにっ!
手に柔らかいものが触れる!
「キャッ! お前! なに触ってんだよ! モモだけじゃなく僕も! 女だったら誰でもいいのか?」
「触りたくないわ! お前がこすりつけてくるからだろ!」
「揉まれたら揉み返す! 百倍返しだ!」
ロロが叫ぶ!
ぐるぐる回るなか、ロロがもぞもぞしてるが、うまく態勢を整えられないようだ。こいつどんくさいな、口だけだな!
闇の中回りながら僕にちょこちょこ触れる柔らかいものにターゲッティングする。声の位置から多分ロロのお尻とみた!
「ロロお仕置きだ! スクリュー! もみもみ!」
僕は右手で柔らかいものを捻りもんでやる! 手のひらの中に小さい突起物の感触が!!
「キャアアアアアアアアアアアアッ!」
モモさんが、絶叫する! や、やっちまった! けど、僕は幸せだ! 回転が止まり、一瞬僕達のまわりの手が緩み、風と雪が降り込んでくる。
「それ、ロロ、違う! 胸、私の! コロス! マリー! 後で!」
やばい! 殺気的なものが辺りに膨れ上がる!
「モモさん! ごめんなさい!」
「二人とも、裸で雪の中に投げ出されたくなかったら、大人しくして!」
「「はい!」」
僕とロロがハモる。
さすがにスケルトンの中に裸で投げ出されるのは嫌なので、流れに任せて力を抜いて転がり続ける。
けど、少しづつ寒くなってくる。裸で濡れてるし、たまに僕達の着けてた濡れタオルもあたってくるし。
地獄なのか天国か、いろんなものが色んなところにあたる。
僕は無になる。目を閉じる! 何も考えるな! ロロの胸! モモさんのお尻! ロロのお尻! 触れるものを解析し、頭の中で現在の位置を割り出す。解析完了!
「ここだぁ! 念心合体!!」
僕はモモさんに抱きつく。正面からがっしり、一番接地面積が広い体勢だ!
「モモさん! 寒いから、温めてあげる!」
僕の胸にモモさんの胸が触れている。少しづつ暖かくなる。僕は寒いのだけは苦手だ! 死んでしまう! それを回避するためならなんでもするのだよ。
「うん、ありがとう! あったかい!」
モモさんが呟く!
「何、甘ったるくなってんだよ! 僕も寒い混ぜろ!」
ロロが割り込もうとするが、僕は足もつかってモモさんにがっちりホールドしてる。諦めて、僕の背中に貼り付いてくる。
「お前! せめてモモさんにしがみつけ! お前のひんぬーが僕の背中にあたっちょるんじゃ!」
「僕もモモがいいけど、お前で我慢してやる! だって寒すぎるんだもん!」
けど、悪くない。背中もほんのり暖かくなる。
ん、寒さでちょびトリップしてたけど、僕は今どういう状況なんだ? また、サンドイッチ? やめだやめだ考えたら負けだ! けど、僕のキャパを、超えそうだ!
寒いけど、暖かい! ぐるぐる回りながらごりごりスケルトンを潰してると思われる。なんか、ガツガツ音がするので、多分モモさんは、引き潰しながら更に多数の手で、辺りのスケルトンを殴り続けてるのだろう!
ガキィーーーン!!
大きな音が鳴り響く!
「宝珠を一つ握り潰したわ! まだまだいくわよ!」
モモさん元気だな! 三半規管強すぎだろ!
ん、待てよ!
「モモさん! 回り続けなくてもよくね?」
「そういえばそうかも! 早く気付けばよかった。他の手だけでも十分だったかも。けど、弓持ちは殲滅したみたいだから、一旦戻ってあたたまろっか?」
一旦僕たちの回りは動きを止め、その間にさらにがっしりとモモさんにしがみつく。
「あっ、そういえば、先生は?」
「お姉様は、大丈夫よ!」
一瞬、先生も一緒だったらもっと激しかったのではと、頭をよぎる。
「マリーちゃん! お姉様にはエッチなことしないでね!」
ギクッ!!
モモさんが見透かしたように言う!
「するわけないでしょ、いままでのは不可抗力だ! それに先生怖いし、ある意味!」
「じゃ、戻るわよ」
また僕達は巨人の手の中でぐるぐる回る。そして球は止まり、ブルブルする。ゴミとかを落としてるんだろう。球がはねてジャポンという音がして、足下にお湯が入ってくる。浴槽に帰って来たんだな。
手探りでタオルをまき直して湯船に浸かる。寒いので肩まで浸かる。フッと、巨人の手が消え去った。
頭がぐるんぐるんして、耐えられずモモさんにしなだれかかる。
「甘えん坊さんね!」
モモさんが僕の肩を抱く。
ロロは風呂のふちに頭をのせてへばっている。
ザパーン!!
水音と飛沫だ! 敵か? 僕はまだ動けない!
「宝珠一つ破壊しました。少し暖まらせて!」
先生の声だ!
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。




