第二十九話 怒りの竜戦士
「小さき者よ、私を倒せるか?」
顔と思われるところには、複数の頭、目、鼻、口等が乱雑にならんでいる。正直気持ち悪い。どっから喋ってるのか?
「何で、倒さないといかんのだ! このうんこ野郎!」
このデカブツ、馬鹿なのか?
なんか腹立つ!
「戦いこそが、私の望み。強い者と戦うのに何の意味がいる?」
こいつ、何言ってんだ?
戦いが望み?
間違いない。馬鹿だな!
「モモさんはどうなった? お前はモモさんなのか?」
「私の依り代となった者か? あの者は力を求め私という力を手に入れた。私はあの者だとも言える」
「嘘つけ! お前のどこがモモさんだ! どこからどう見ても、お前はきったねーうんこ野郎だろ! 水にながすぞコラ! モモさんを返せ!」
僕は無性に腹がたち巨人に怒鳴る。
なにが僕のカンに障ってるのだろう?
「汚い奴だな。何故私を排泄物扱いするのだ? そんなに排泄物が好きなのか? お前が望むのなら、ここで排泄しようか?」
こいつ、慇懃だけど、馬鹿だな。頭いっぱいあるのに。
「こんなところで、うんこするな馬鹿! お前が戦い戦いばっかのうんこみたいな馬鹿って意味だ! 戦いなんかどうでもいい! まだ、デートは終わってないんだ! モモさんを返せ馬鹿!」
そうだ、まずはデートを邪魔された事。それと可愛い女の子が強迫観念に囚われてるかのように強さを求めている事が僕を苛立たせているのだろう。モモさんのような可愛い女の子には幸せになって欲しい。まあ、僕のわがままかもしれないが、僕は何事も自分の思い通りに変えてやる。そのために地獄のような修練の下、力を手に入れたのだから!
「悪いが、その者とはもう存在自体が融合してしまっている。混ぜた絵の具の色が元に戻せないように、もう戻る事はできない。私は、モモという者が望んで顕現したものだからな。私にとって戦いがすべて!全てを破壊するか、私が破壊されるかそれだけだ!」
「ハァー? 何言ってやがる? 戦いが全て? 手段だろ、欲しいものを手に入れる為の! うまいもの食ったり、買い物したり、好きな人たちを守るため。戦わなくても手に入るなら、戦い自身もいらないだろ!」
僕は頭に血が上り、巨人を指差す!
「腹立つんだよ! 綺麗な女の子が趣味は鍛錬です。デートは初めてです。なんだそれ! 遊べ! 遊びやがれ! 相手がいないなら俺と遊べ! あげくの果てにはうんこ巨人とくっついて戻れません! ふざけるな! こっちは、可愛くてナイスバディなモモさんとぎゅーしたりちゅーしたり出来るかもって期待してたのに!」
「それは、もう叶わんな、モモという者の人格は……」
「黙れ! 口を開くな! うんこ! 俺はモモに話してるんだ! 鍛錬もいいが、俺と遊ぶぞ! まずはバーベキューだ! ウニ、居るか? そこで待機っ!」
「え、何で解ったんですか? ですけど、兄ちゃん、あれはやばいんじゃないですか?」
ウニが僕の横に現れる。ヤバい? どこが? 僕の頭に浮かぶヤバい奴と言えばオヤジ。アレにくらべたらライオンとハムスターくらいの格差がある。当然オヤジがライオンだ。ド変態のライオンだが……
「余裕だ! シェイド、俺がウニに触ったら、ウニを影に避難させろ!」
僕の影からシェイドが顔を出す。ちょっとつり目だシェイドだな。
「了解、怪我するなよ」
「ああ」
僕はシェィドに手を振る。
「オーバー・ブースト!」
魔力を暴走、増幅する。
「マジック・カノン!」
むかつくからうんこには話はさせない。
僕の両手から放たれた数千のマジックミサイルはもはやミサイルでなく一本の光りの奔流だ。
光は巨人を包み込み、更にその後ろにあるもの全てを破壊しつくす。街を背にしているので問題はないだろう。街を出たのは全力を出す可能性があったからだ。
みるみる巨人が溶けるように小さくなっていく。頃合いだな。
「ウニ! ハイタッチ!」
僕は魔法を中断し、ウニとハイタッチする。
「え、え!」
ウニはきょどりながら僕の影に吸い込まれていく。
制服のボタンを外しながら僕は歩く。
巨人は肉塊になり地上に落ちる。みるみるうちにボコボコ湧き出すように大きくなっていく。
マリーになった僕はその肉塊に触れる。
「タッチヒール!」
癒せ! モモの全てを心を体を魂を! 残りの魔力を全て込める!
肉塊が暖かい白い光に包まれる。増殖は止まり、今度は縮んでいく。
『もっと強くなりたい』
『力をコントロールできるようになりたい』
『普通の女の子みたいに、もっと遊びたい』
『……可愛くなりたい……』
モモさんの思考が僕の頭に流れこんでくる。うん、やっぱりモモさんも普通の女の子じゃないか。
『母さんに、会いたい……』
悪いが、それは僕では叶えられない望みだ。けど、全力で協力する!
収縮が収まり、光が消えるとそこには一糸纏わぬモモさんがいた。残念な事にうつ伏せだ。しかもこっちに頭を向けている。
「ううん……」
モモさんが目を開けて上体を起こす。
髪の毛で先は隠れているが、形のいい胸が丸見えだ!
「マリーちゃん! ギルティ!」
「うわっと!」
サリーの声がして、僕は目を塞がれて、影の中に引きずり込まれた。
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