第二十八話 ヘカトンケイル
「なんで、なんで私から逃げるの?」
感情の無い顔でモモさんが呟く。
「逃げるわ、そりゃ、死んじまうわ!」
ゴツッ! ゴツ! ゴツ!
僕の居たところに、ばんばん手が降ってくる!
やばっ、道路の石砕けてるし!
暗い夜の街の中、ちょくちょく振り返りながら、つかず離れずモモさんを誘導していく。
まだだ、まだここでは危険だ。
できるだけ人気のない方、建物の少ない方へ行く。都合良く広場とかあればいいんだけど、今のところない。やはり城壁の外に出るしかないか。
逃げて逃げて攻撃をかわしつつやっと城壁につく。
けど、どうするか?
とりあえず外に出るか、地を蹴って跳躍する。
重力操作を駆使して、城壁の上まで跳び上がり城壁の外に出る。
待つことしばし、轟音と共に城壁に穴があき、そこからゆらりとモモさんが出てくる、
「キラさん……追いついた……」
まだだ。
まだ早い。
僕はまだ逃げ続ける。
街から離れ、荒野に出る。ここまで来ればもういいだろう。
「やっと追いついた! もう、逃げられないわよ!」
モモさんが僕に微笑む。沢山の巨人の手が僕を囲む。
「キラさん! 全力を受け止めて! 逃げ場はないわ!」
「受け止めてたまるか!」
無数の巨大な手が僕に襲いかかる。
けど、僕は動じない。
「モモさん、違う。逃げ場がないのは僕じゃない! モモさんだ!」
僕は声を張ってモモさんを指さす。
ここなら何も無いから、他に被害は出ないだろう。
僕は集中し膨大な魔力を開放する。魔法は無詠唱。いままで数え切れないくらい繰り返したから、念じるだけで発動する。
「マジック・ミサイル・ミーティア・シャワー!」
僕の手から、まるで打ち上げ花火が炸裂したかのように発せられたとめどない数のマジックミサイルは、流星群のように、巨人の手達に吸い込まれていく。
ズガガガガガガガッ!
轟音を放ち、須臾の間ののち、全ての巨人の手は破壊され尽くされていた。
「さすが! キラさん! わたしはわたしはもっともっと強い強くなる!」
え、まだ終わらないの?
モモさんはゆっくりと両手を首筋にあてる。そこには一本の鎖が現れる。
ブチブチッ!
まるで、草花を千切るかのように、軽くそれを引きちぎる。
「オオオオオオッ!」
モモさんの口から女の子が発したとは思われない、地の底から聞こえるような低い叫び声が発せられ、その体が弾け膨れ上がる。
なんだ、なにが起こってるのか?
「まさか、人間がわたしの封印を解くとはな」
僕の目の前には、小さいビルくらいある、沢山の手を生やした巨人が立っていた。
百手巨人!
神話の時代、神に刃向かって地底に封印されたと言う、伝説の最強最悪な巨人だ!
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