第二十七話 道場での立ち会い
「では、いきます!」
モモさんの両側の宙に浮かぶ2つの手が交互に僕に襲いかかる。
「アクセル・ファイブ!」
5倍がけの加速魔法で難なくかわす。
「セイッ!」
モモさんが竹刀で突いてくるが、左前方に踏み込みつつ避けて、がら空きになったモモさんのうなじをつつく。
「僕の勝ちだな! 相性の問題だよ、パワータイプとスピードタイプの違いだよ」
うまい話はないものだ、モモさんの家に着くなり、離れにある道場に連れ込まれ、立ち合いを申し込まれた。
「強い! 初めてこんなに強い男性に会いました!」
モモさんが満面に笑み浮かべる。
「今日は新月、リスクなく全力が出せます。怪我させたらごめんなさい」
モモさんが目を閉じる。なんだ? 空気が変わった!
「タイタン・ハンズ! アンチェインド!」
ジャラン!
空中に無数の鎖が現れて、崩れ、床に落ちる前に消え去る。なんなんだ?
「ハンズ・オブ・ヘカトンケイル!」
目を瞑ったモモさんのまわりに、無数の巨大な手が現れる。まるで、千手観音みたいだ。いくら僕が素早くとも、同時に襲われたらかわしきれない!
僕はロザリオを外しポケットに入れる。僕も本気を出すしかない! やらないとやられる!
「では、いきます!」
モモさんの声が静かな道場に響く。
無数の巨大な手が僕に襲いかかってきた!
「うわっとぉ!」
僕は巨大な手をかわし続けるが、ある事に気付く。追い込まれてる。道場の隅に!
「わたしはいつも加減して生きてきました。本気でいつも戦いたかった。待ってました、強い男性を。わたしを倒して下さい! キラさん!」
うわ!
モモさん若干トリップしてる。ヤンデレかよ。
開いた目が何もない所を見てる。
「モモさん! 僕は強くないよ! 僕の負けだ! 降参だ!」
僕は両手を上げる。これ以上は立ち合いではすまなくなる。無意味な戦いはしたくない。
「降参? 何を言ってるの! まだ何もしてないわ!」
むぅ、完全にどっかに行ってしまわれてる! なんで僕のまわりはバトルジャンキーや暴走する人ばかりなんだ! 僕は平和主義者なのに!
後ろは壁、ぶち抜いて逃げる事も考えるが、今のモモさんに背中を向けるのは危険な気がする。
モモさんを見るが死角がない! どこに行っても殴り倒されるか、摑むかされそうだ!
………
あった! 死角を見つけた! 少し気がすすまないが。
「いきます!」
巨大な手が僕に襲いかかる!
「アクセル・インフィニティ!」
超加速で、辺りがゆっくりになる。限界を超えて、筋肉が壊れるのを感じる。迫り来る手をかわしながら、僕はスライディングの要領で、モモさんの股の下に滑り込む! くぐり抜け……
……られななかった! 咄嗟に反応したモモさんが足を閉じる! 僕はちょうど足に挟まれる! 加速がきれる!
「キャアアアアアーーッ!」
モモさんがしゃがみ込んで、ひどいことに!
僕はスカートの中に顔を突っ込んだ形で、しかも、薄布越しにモモさんが僕の顔にまたがってる。
ラッキースケベ!
いやアンラッキードスケベだ!
モモさんが僕の頭を締め付ける。すべすべで幸せではあるが、このままだと、僕の頭は潰されるかも?
オートヒールがあっても、一撃死なのでは?
「グラビティ・ゼロ!」
僕とモモさんの重力をカットして、立ち上がる。モモさんのパンツに更に顔を押しつける形になるが、仕方ない! 不可抗力だ!
「キャッ!」
足が地に着いていないのと、無重力でモモさんの足の力が抜け、天井に投げ出される。それでも巨人の手は、僕に連綿と襲いかかってくる。モモさんは天井を蹴ってこちらに向かうが、その前に僕は道場を通過し、庭に逃げる。
跳んで逃げようかと思ったけど、モモさんを正気に戻すべきだと思って却下。
「えっちぃのは! 大っ嫌いです!」
モモさんが僕を追ってくる!
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。




