第十七話 愛の戦士
ガッシーン! ガッシーン!
重い金属のきしむ音をたてながら、ギル王子は前進する。それに対してアルスはただの服、武器もなし、構えもなしだ。
けど、僕は知っている……こいつが素手で石のゴーレムを大量破壊した事を。このままでは、王子がボコボコにされてしまう!
「王子、攻めろ! 守ったら負けだ!」
僕は王子に叫ぶ!
あいつは正真正銘の化け物だ!
伝説の魔神すら封じた力を屈服させるほどの!
「おおっと! マリー! 鉄壁の防御を誇るサンドリバー重騎士団でも防御力が飛び抜けてるギル王子に守ったら負け宣言! 対するアルスは武器も無く攻撃手段は皆無に等しいはず! そんなにアルスは強いのかー?」
サリーが煽る!
いつの間にか来たアナが拡声器を奪う!
「何の因果か、2人の美丈夫が、マリーを求め争う事に! ああ、美しき事はなんて罪なんだ! と言うわけで、商品のマリーさん! どちらに勝って欲しいですか?」
僕の所に来て、拡声器を僕に向ける。
「えー、正直な所、出来ればどちらにも勝って欲しくないです。ダブルノックアウトとかにならないでしょうか……」
「おおっとぉ! マリー、どちらのイケメンもいらない宣言! これは、数多くの女子を敵に回した事でしょう!」
なんかアナが変な方向に持ってきそうなので、拡声器を奪う。
「皆さん! 考えても見て下さい! 確かに2人とも魅力的な男性です。けれども、私は話したこともあまりなければ、彼らの事は何も知らないに等しいです。そんな方に自分のものになれと言われても、正直戸惑います……せめて、まずは友人からお願いしたいです……」
上手くキャットを被れたはずだ。
これで無茶な要求はされないはず。
僕の拡声器をサリーが奪う。
「マリーちゃんのお願いで、勝者はお友達になる権利! 両人ともこれでオッケーですかー?」
「よかろう!」
「まあ、いいさ!」
王子もアルスも了承する。
「では、俺から行くぞ!」
王子はランスをアルスに突き出す!
ゴッ!
固い音がする。アルスの突き出した左手がランスを止める。よく見ると手のひらが灰色になってる。
「おっと! ギル王子自慢の神槍を素手の手のひらで止めた! 解説のアナさん、これはどういう事でしょうか?」
サリーがアナに拡声器を向ける。
「それは多分、手のひらを何らかのスキルで硬質化してるのだろう。けど、あのクラスの武器が傷一つ与えられないスキルなど聞いた事ないな?」
アナが首をかしげる。僕は理解した。拡声器を手にする。
「クロノス・ブラッド・ストーンの呪いの力! アルスは自分の体の時間を自由自在に止めれるのでしょう。時が止まったものは壊せない! 見た目では、軽装ですけど、ギル王子より頑強な鎧を纏っているに等しいです!」
ついつい解説してしまう。一度はやってみたかったんだもん。
「つぎは、俺の番だな! ウラ! ウラ! ウラ! ウラ!」
アルスが王子を殴る。てんでなってない素人のケンカパンチだけど、当たった所に拳の型がつく!
「馬鹿な! 俺のブルーディスティニーが……」
王子が呟く。なんか聞いたことある名前だなー?
今度は、おかっぱ頭のサクラが拡声器をとる。
「王子のブルーディスティニーは、サンドリバーの最新の鎧! それを素手で傷つけるとは、なんて非常識なんでしょう!」
なんかサクラが解説してるけど、もう、なんか飽きて来た。
「アルス、飽きてきた! もう終わらせていいよ!」
僕はアルスの方に行き呟く。
「友達から始まる愛の力!」
アルスがむりくり愛の力を出す!
アルスの体が金色に光り、上半身の服が弾け飛ぶ!
髪は当然逆立ってる。
「うんばらばっぱ砲! 手加減バージョン!」
アルスの突き出した両手から出たエネルギー波が王子を場外に吹っ飛ばす!
「勝者アルス!」
サリーが拡声器で高らかに叫ぶ!
当然のごとく呆気なかった……
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