第十九話 冒険者ギルド
どこに行こうか迷うが、僕はまずは冒険者ギルドを目指すことにした。
男だった時の僕、キラ・シドーは銀の認識票の冒険者だったけど、今の僕マリーは、その実力は微塵もない。まずはマリーの冒険者認識票を作らないと冒険者として何もできないな。
今抜け出したアルゴノートの迷宮は珍しい事に町中にある。とある貴族の離宮を作り直そうとしたときにたまたま発掘された。それが1週間くらい前で、今の所最高到達階層はアナ達の地下30層のはずだ。
どうも今の所この迷宮は10層おきにフロアボスがいて、倒すと宝箱がでる。仕入れた情報や今までの僕の経験ではフロアボスを最初に撃破したときはいい物が出ている。次の地下40層のは是非とも欲しい。
アナ達と一緒にいたらそれも可能だったかもしれないけど、正直それは勘弁してほしい。
何が悲しくて気絶してる者に、う○こちびるようなカンチョー放つ奴と一緒に戦いたいと思うだろうか? 常にお尻を警戒せざるを得ない。
歩きながら考えを整理する。まず、当面の課題は三つ。
まずはこの呪いか魔法か何かわからないけれど、女の子になった理由を見つけて男に戻る事。
今は無力なので、新しい信頼を置ける強い仲間を探すこと。
ジェフ、イリア、ヘルメの三人に復讐すること。あいつらのやった事は殺人未遂だ。運が悪かったら僕は死んでいた。少しは懲らしめられたが、まだ気持ちは収まらない。殺しはしないがもっと痛い目みせてやる。出来れば社会的に抹殺してやりたいところだ。
気がはやり、僕はギルドに向かって走る。問題は胸がぶりんぶりん動いて痛い。それに通りすがる人たちの目が痛い。
どうにか何事も無くギルドに到着する。アナ達に遭遇しないかヒヤヒヤものだった。
僕は扉を押し開ける、西部劇のような両開きの上下が空いたやつだ。
中の円卓には数組の冒険者たちがとぐろを巻いている。冒険者たちは、食い入る様に僕を見る。
「綺麗だ!」
「女神様!」
「……おっぱい……」
男の冒険者たちから、感嘆の声が漏れる。そんなに僕は可愛いのか? 早く鏡で自分自身を見てみたい。少し気持ちがいいので軽く微笑んでみる。
奥を目指して歩いていく。視線ひとりじめだ。
メイド服の胸はかなり際どく空いている。特にそこに視線を感じる。なんかやだな……
「うちのパーティーに入らないか?」
「お前んとこ、人足りてるだろ、うちは人手不足なんだ!」
「うちは、鉄ランクだぜ、稼げるぞ!」
何人かの冒険者が、駆け寄ってきて、僕の前でとっくみあいを始める。もしかして、これって罪な女ってやつか?
「あのー、道を開けていただけませんか?」
僕は猫なで声を放ってみる。涼しげな伸びのある声、やばい、我ながらめっちゃいい声。最高だ。
冒険者たちがポカンと呆けたように道を空ける。
辺りを見渡し、冒険者の新規登録のカウンターを見つけて向かう。
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