第一話 始まりは夜から
「孤児院? 襲撃? マグロ? 何それー?」
僕はサリーと別れてからの一連の出来事を要約してサリーに話す。石になったアルスの事、孤児院とリナの事、ピースフル・ワールド、シャングリラの戦い、海鮮ズの襲撃。そして、今、何者かに孤児院が襲撃されてる事。
「たった数日で、めっちゃ聖都を引っかき回してるわねー!」
サリーが苦笑する。まじその通りだ。
夜の街道を走ってる。僕は重力をカットしてサリーにおぶさって、サリーが走る形だ。たまに商隊が野営してるたき火がある以外は、月明かりのみだ。木々のざわめき、狼の遠吠えも聞こえる。
「サリー、疲れてない?」
僕はサリーの耳に口を近づける。
「んー、少し疲れて眠いけど、急がないとねー」
夜は肌寒いけどサリーの背中が温かい。僕も眠いけど我慢する。そういえば、いつのまにか右手のミサンガが切れて無くなってる。多分斧で斬られた時に僕を守ってくれたのだろう。なんか嫌な予感がする。なぜなら、母さんから何のリアクションもないからだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
僕達は夜の街道をただ走る。
いつの間にか明るかった月も沈みかけ、見上げるとぼんやりとした天の川が見える。どれくらい走ったのだろうか。
「サリー、少し休もっか」
僕はサリーをきゅっと抱きしめてみる。
「そうね、少し疲れたわ……」
サリーは立ち止まって息を整える。
僕たちは、ちょうどいい石を見つけて腰掛け、一つのマントにくるまって、収納から出したコーヒーを飲む。コーヒーのカフェインが落ち着く。あと、サリーもコーヒーも暖かい。
「綺麗な星空ねー。降ってくるみたい」
サリーが空を見上げる。僕も見上げる。目が暗がりに慣れて、見える星の数が増える。本当に光が降ってくるかのように見える。
いつか時間があるときに、星について勉強しよう。僕は北斗七星と北極星くらいしか解らないや。
「マリーちゃん、あれって白鳥座でしょう」
サリーの指した先には少し歪んだ十字に並んだ星が見える。
「なんかロザリオみたいだね」
封魔のロザリオは今は僕の首にかかっている。
「魔神を封じてたっていう呪われてそうなロザリオだけど、あたしには間違いなく幸福のロザリオね」
サリーが僕に屈託無く微笑みかける。
「そうだね、僕にとっても間違いなく幸福のロザリオだよ。母さんに少しは感謝しないとね」
「じゃ、恩返しにいきますか」
サリーは立ち上がる。僕はまだ全快でないので、ぶらぶら立ち上がり負ぶって貰う。
きらきらな満天の星空の下僕たちは走っていく……
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