第二十五話 別れ
世界は溶けて、元に戻った……
僕はサリーにロザリオを差し出す。
サリーは、少し悲しそうな顔をしてそれを受け取る。
「大義であった。受け取れ!」
馬鹿王子が声を張る。なんで馬鹿って声がデカいのだろうか。本当にぶちのめしてやりたくなる。けど、それは八つ当たりだ。我慢する。
執事が僕に皮の袋を持ってくる。
それをひったくるように受け取る。
「謁見終了じゃ、去ね!」
いねじゃねーよ!
ガチでぶちのめしたろうか!
いかん。サリーはこいつとの平和を選んだんだ。僕にそれを壊す権利は無い。
僕らはしっかりと頭を下げ、部屋を出る。サリーが僕の方を見ることはなかった。
城を出て橋を渡る。言葉はない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
夕焼けが綺麗だ。赤い、とても赤い。
しばらくの間多分1時間くらいでは無いだろうか。僕はただ歩いた。
そして、夕日に照らされて、訳も無く走り始める。
ただただ走る。
気に要らない!
世界の全てが気に入らない!
ただただ走った。
走って走って走って走った。
何処に向かってるのかも解らない。
「アアアアアアアアーーーッ!!」
僕は叫び飛ぶ。
でっかい岩を見つけて、マジックミサイルを放つ。
ガンガン放つ!
ズガガガガガッ!!
数百のそれは簡単に岩を粉みじんにする。
「気が済みましたか? ご主人様!」
振り返ると、マグロを抱いた牛男がいる。
「あんたが何でマグロを連れて来たかわかんないけど、これはなんか違うんじゃないっすか? みぐりーす!」
マグロ……
そんなの言われなくてもわかってるよ!
どうすればいいかわかんない!
「キラ様、何があったかは、解りませんが何を悩んでいるのですか? あなたは好きにしたらいいのですよ! あなたは、私に言ってくれた。牛男お前は俺のものだと! 手をとれと!」
牛男は元来た方を指差す!
「こんな私に手を差し伸べてくれたのはあなたが初めてです。あなたはわがままに生きればいい! 世界が敵になったとしても、私は命ある限り、あなたと一緒に行くのみです! 悩む事などないでしょう! あなたの傍らには常に牛男とベルさんがついてます!」
牛男がサムズアップする。なんかいいな!
あったかい!
「世界を敵に回すって面白そうですね! それなら喜んでマグロも参加しますよ! あ、お給金は弾んでくださいね!」
僕は何をうじうじしてたんだろう!
シンプルだ!
サリーは好きだ!
掻っ攫う!
邪魔する奴はぶちのめす!
サリーの意思?
関係ないね!
平和が欲しいなら与えるのみだ!
馬鹿王子伯爵より稼げばいいだけだ!
「キラ! すぐに戻って、孤児院が襲撃されてる! 私達だけでは守りきれない!」
僕たちの前に半透明の母さんが現れる。言うだけ言うと消え去った。
「えー、今のなんすか! どうしましょう?」
「牛男! マグロ! 孤児院を頼む!」
僕は2人に頭を下げる。
「後で来る! すまない! 行かせてくれ!」
僕はバーミング城に、向かって走りだした!
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