第二十三話 垣根の無い世界へ
「え、何なの? ここはどこ!」
サリーが叫ぶ。サリーの格好は白いローブに金の刺繍、胸当てに手甲に脚絆。前にワイバーン狩りをした時の冒険者装備だ。
僕は自分自身の恰好を強烈にイメージした。そのかいあって、キラの体に黒い鎧、竜戦士バージョンだ。
人体模型じゃなくて良かった。あれは多分ドン引きされる。会話にならないだろう。
「ここは時の止まった世界、シームレス・ワールド。そこにあるコーヒーが冷めるか、それを飲み干すまで、ゆっくり話ができる。強引な方法ですまないけど、2人っきりで話がしたい」
「悪いけど、あたしは話したい事はないわ。ほっといてほしい……」
サリーは僕に背を向ける。なんて言えばいいのだろうか?
「僕は、ずっとずっと1人ぼっちだった。誰とも仲よくなれず、誰からも必要とされなかった。生まれて初めて両親以外から、優しくしてもらって嬉しかった。大好きって言って貰えて嬉しかった」
「今でも大好きだよ……」
サリーは僕の方を振り向く向くと勢いよく抱きついてきた。僕は数歩たたらをふむ。
「マリーちゃん、大好きだよ!」
より強く僕を抱きしめて、サリーは離れる。
「とりあえずー、座ろっか」
サリーは、テーブルを指差す。喋り方がゆっくりだ。
僕たちは、正対してテーブルにつき、コーヒーに口をつける。
パキン!
僕たちの装備してた鎧が砕け散る。そして光の粉になって地面につく前に消え失せる。
「え? どうしたのー?」
「なんだろう?」
『ここでは、着ているものは、心の距離、縮まると、どんどんなくなってくかしら。心の世界に近い世界だから、子供はできないかしら。ベルはもう限界、あとはハッスルするのよ! さよなら!』
ベルの言葉が頭に語りかけてきた。おいおい、ハッスルって何だよ!
子供作る行為する気はねーよ!
「まず、何をしてここに私達はいるのー?」
サリーはコーヒーカップの取っ手をいじってる。
「ベルが、僕にこの魔法を込めた石をくれた。その石を持ってキーワードを唱えると発動する形で、こうなっている。エルフの固有魔法みたいだ」
「また、あの、変態エルフの仕業なのね! 非常識にもほどがあるわ!」
サリーの顔が怒りに染まる。
「サリー落ち着け、確かに太る魔法は迷惑極まりなかった。けど、今回は代償を払ってまで、ベルはこの魔法を使っている。今ベルは寝込んでる。いつ目覚めるかわかんないそうだ」
「え、何それ、償いの気持ち?」
「どうだろう。ベルは、僕が僕らしくあってほしいって言ってた。」
「どゆこと?」
「うん、なんていうか、さっき聖都でサリーと会ってから、元気なくなったみたいで……」
「ごめん、ショックだったの?」
「うん、ずっと、ずっと会いたかったから……」
僕とサリーは見つめ合う。優しいローズピンクのツインテールがきらきらしてる。澄んだ大きな目、白い傷一つ無い肌。頬がほんのりとピンクに染まっている。
「やっぱり、可愛い!」
この世界は反則だ。
思った事が口に出てる。
「ありがとう」
サリーが微笑む。
「もっと近くで、もっとたくさん見たい!」
僕は、立ち上がりサリーの横に立つ。
「あたしも、もっと近くで、たくさんたくさん見たい!」
サリーも立ち上がる。僕を見上げてる。
「サリー! 目の前に天使のような可愛い女の子がいたらどうする?」
「え!」
サリーは目を見開く!
三度目は僕から。
「みんな、こうするはずさ」
僕はサリーを抱きしめて、その唇を塞いだ。
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。




