第二十二話 伯爵
「なんか、薄暗いっすね。臭いし気味悪いっす。イメージ牢獄みたいっすね!」
マグロがキョロキョロ回りを見渡す。確かに暗いしカビ臭い。剥き出しの石の壁に、装飾品の類は一切無い。
今僕らは城の応接室みたいな所で待たされている。僕と牛男はスーツ、マグロはベル用に作ったドレスをつめて着させている。僕達はフォーマル用の服も一応用意している。収納から出して御手洗で着替えた。流石に伯爵と呼ばれる者と会うのに普段着はあんまりだろう。
城門をくぐったらちょっとした町みたいになっていた。道なりに坂道を上ると城に着き、城の衛兵に連れられてその中の一室で待つように言われた。綺麗な外観とは裏腹に、城の中は窓が少なくむきだしの石造りでなんか薄暗い。
お金がないのか、それとも装飾よりも機能を優先してるのだろうか? まあ、僕にとってはどうでもいいが。
待つことしばし、僕たちは執事に広めな部屋に案内される。
中央には玉座みたいなのがあり、そこにカボチャパンツみたいなのに、白タイツで、首にひだひだした物をつけて、王冠みたいなのを被った馬鹿王子様みたいな格好の人物がいる。髪型は昔の音楽家みたいなクルクル巻いたヤツだ。バッハとかモーツァルトみたいな。昔小学校の音楽室にあった絵みたいな感じだ。夜になると、その絵の目が動くというのは小学校の七不思議のあるあるだ。
その隣には、胸元がばっくり開いた赤いドレスのサリーがいる。
とても、魅力的だ。隣の馬鹿王子とは大違いだ。
けど、サリーのすました顔がなんか距離を感じても悲しい。
「予が、バーミング公、マキュロ伯爵である!」
馬鹿王子様が名乗りをあげる。一応膝をつき、頭を下げ恭順の意を示す。マグロと牛男もそれにならう。
「面をあげよ!」
馬鹿王子がほざく。
サリー、あんなのと婚約したのか?
結構顔はましだが、服のセンスなさ過ぎだろ。
キモすぎる!
あの格好はなんかの罰ゲームなのか?
僕は顔を上げ、一応付き合ってやる。
「私の名前はキラ・シドー。しがない冒険者です。以後お見知りおきを」
「許す! お前は、吸魔のロザリオを持ってると聞いた。献上せよ!」
何かといちいちむかつく!
お前が何を許すんだよ!
サリーの婚約者というのが最大原因だと思うが、まじ、ぶちのめしたい!
苛立ちを顔に出さないようにして、僕は吸魔のロザリオを外し差し出す。
「サリーあれはお前のだろう。受け取れ!」
馬鹿王子がのたまう。なんだ?
その上から目線。
まじで泣かしたろか!
サリーがゆっくりと僕に近づいてくる。
その間に僕はもう片方の手にベルから貰った水晶を隠しもつ。
サリーがロザリオを取ろうとする手に触れる。
「……シームレス・ワールド……」
小声で唱える。
瞬時にして、僕とサリーは、ピンクの空の草原にいた。
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