第十七話 対決
「何言ってるんだいきなり? お前頭大丈夫か? 僕がお前たちとは一緒に行く訳ねーだろ!」
僕はジェフの腕を振り払う。
「はぁ、お前こそ、何言ってやがる。俺たちは聖王都最強の『セイクリッド・マローダー』の一員だぞ」
また、ジェフは僕の肩を掴む。けど、視線は胸元だ。このメイド服、襟の所がばっくり開いてるもんな。正直、怖気がする。ジェフに見られるのは。
「最強なのはクランで、お前たちじゃないだろう。現にもしこっちのアナたちの誰か一人と戦ったらお前ら秒殺だよ、タイタンみたいに秒殺だよな」
「ほう、言ったな牛乳、俺たち3人とおめーらの誰か一人と戦って勝ったらお前は俺達、いや俺様の奴隷になれ」
なんか、ジェフの欲望がだだ漏れてるような。
「うしちちって言うなや! お前、大した自信だな。それじゃあ早くこっちの三人から選びやがれ」
「オーッホッホッ! とっても楽しそうな話ね、それでは、あなた、かかってきなさい」
イリアはサリーを指差す。1番弱そうに見えるのか? まあ、誰を選んでもはずれのくじ引きだけど。
「上等よ! けど、あたしが勝ったら何がもらえるの?」
サリーが腕を組んで前に出る。凶悪な胸が強調されている。ジェフがそれをガン見している。もしかしてジェフ、巨乳好きなのか?
「それは、そうですわね、そこにいる下品な胸の生き物を差し上げますわ」
イリアは蔑むような汚いものを見るような目つきで僕を指差す。それにしても下品な胸の生き物はひどい。たしかにデカいけどな……
「わかったわ!」
サリーが元気よく頷く。何が『わかったわ』だ。何勝手に僕を景品にしてやがるんだ。サリーには何のメリットもないじゃないか。
「サリーたのんだぞ、これで晴れてマリーは私達のものだ」
アナがキラキラした目で僕を見ている。
「おい、待てよ、お前ら、僕の意思はどうなる」
「諦めろマリー。お前の胸がデカイのが悪い」
「胸関係ないだろ、アナ、触ろうとするなや!」
僕はにじり寄ったアナをひらりとかわす。かくして、サリーと『セイクリッド・マローダー』の3人は僕を巡って戦う事になった。その前に、ジェフたちは準備の時間を取った。装備ボロボロだもんな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「馬鹿な女だ、巨乳は頭が悪いってのは本当なんだな、裸にひんむいて揉みしだいてやるぜ」
ジェフは嬉しそうに双剣を抜く。何が悲しくてジェフに揉まれにゃあかんのだ。けど、それは無理だよね。
「フフフフフッ! 楽しいショーの始まりよ」
イリアは杖を構える。
「安心しろ、殺しはしない。次はお前だ」
ヘルメはアナを指差す。ああ、そうなのね、一人一人順番に潰してやろうと考えてる訳ね。フラグにしか見えないけど。
「じゃ投げるぞ、コインが地面についたら開始だ」
キーン!
僕は銀貨を弾くと後ろに下がる。
サリーと三人は対峙している。サリーは嬉しそうに微笑んでいる。
銀貨が床についた。
「ワン・ツー・スリー!」
サリーの声が聞こえた後には、ジェフたち三人とも前のめりに倒れた。くの字でお尻を突き出している情けない姿だ。多分、えげつないボディブローを打ち込まれたのでは?
「さん・ねん・ごろし!」
ドスッ! ズガッ! ボコッ!
アナのカンチョーが火を吹いた。こいつはまじで女なのか? 下品過ぎるだろ。ああ、とってもカンチョーやりたかったんだな。
けど、大丈夫なのか、あり得ないような音がしたし、全員激しく大地にたたき付けられている。とくにイリアは若干地面に埋まってるようにさえ見える。正直少しすっきりとしたけど、若干可哀相な気もする。僕もお尻がムズムズする。前世で子供の頃、友達にくらって泣いた惨めな思い出が……
それにしても、今まで生きてきて、女子がカンチョーするのもされるのも始めて見た。
「アナ、お前どういう環境で育ってきたんだ。答えなくていい、めっちゃ田舎だな、拾い食いとか野ぐそとかが日常だったんだろ」
僕はジト目でアナをみる。アナがすこし狼狽える。
「ああ、そんな感じだな……」
なんか歯切れが悪いな? 少しは怒る所だと思うのに。
「それよりもなんか臭くないか?」
アナが鼻をひくつかせてる。うん、確かにう○このような臭いがする。しかもなんとイリアの方から。そういえば、あいつ『楽しいショーの始まり』とか言ってたな。これがそうなのか? 決して楽しくは無いが。
「ま、さすがに宝箱は諦めて行きましょう」
僕らはサリーに促されて、そそくさと部屋を出た。ただ単に臭いがきつかったからだ。
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