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 第十七話 争いの果てに



原始の世界プリミティブ・ワールド




 文字通り、原始の世界がそこには広がっていた。

 原始の時代、人々は何ももってはいなかった。己の体以外。石や骨などを削り道具を作り人は力を手に入れた。人類の歴史は道具の歴史とも言える。その叡智を全て消し去る荒れ狂う嵐のような魔法。物質分解の魔法が凝縮し昇華してこの世の理を変質させるに至る。



原始の世界プリミティブ・ワールド



 この世に新たな世界の名前を冠する魔法が誕生した瞬間だ……




 僕たちの来た方はぽっかり球状に空間がえぐれてる。


 建物の中を照らしていた光の魔法は無事だったみたいで、そのすり鉢状の底を照らしている。


 空間には何もなく、ただ、底に大勢の人が全裸でうごめいている。なんか昔教科書で見た最後のなんとかって言う宗教画みたいだ。確か全裸の絵だったのにふんどしを書き加えたヤツだ。


 ベルの魔法は範囲内の生き物以外全てを消滅させたみたいだ……



 えげつなさすげる!



「よい子の見る物じゃありません」


 僕はベルに見ないようにいう。これは教育によくない。

 けど、この惨状を生み出したのはコイツだよな。可愛い顔をしてる癖に、正真正銘の悪魔だ。


 僕たちのいる隣は、ちょうど衣装部屋だったみたいだ。洋服は消滅してしまってるが、置いてある箱を開けると、中はえげつない女性用の下着がたくさん入っていた。ショーに使っていたヤツだろう。紐とか穴あきとか下着として機能しなさそうなのもたくさんある。これもベルの教育に悪いな。牛男は目を背けて見ないようにしている。


 人々の方を見ると、何かに足を取られてるみたいで、もがきまくっている。なんか白い砂みたいなものだ。多分、塩だろう。


 見ていて可哀想になった僕は下着の入った箱を重力操作で軽くして、彼らの方に投げてやる。箱が開き、下着がばらまかれる。


 殴る蹴るの醜い争いが、ブラジャーやショーツをめぐって繰り広げられる。


 まるで、絵画とかの地獄そのものだ。


 出来るだけ多くの人にいき渡るように、僕は全ての箱を投げる。とっても良いことをした。

 それよりも、お腹が減ってきたので、ここを後にすることにした。


 今日はこの街に、たくさんのクレイジー仮面が発生する事だろう。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「みんな、ご飯たべたかなー? どう思う?」


 ベルと牛男に聞いてみる。もう、夜の21時位だ、よい子は寝る時間だ。


「私は、子供たちは待ってると思います」


「ベルもそう思うかしら」


 僕たちはシャングリラを出て、冒険者ギルドにあと少しの所にいる。


「そうだよねー。心配してるよねー」


 いかん。何か話し方がおかしくなってる。かまっぽい。


 今から23人分の食事を買って帰ると結構な時間になりそうだし、けど、儲けたからいいもん食べたいし。


 よしっ! 今日は焼き肉に決定!


「そういえば、どうしてデブっちょはパーを出したのかしら?」


 ベルが僕の方を向く。ちなみに今は僕はしっかり服を着ている。


「それは、多分僕がチョキ以外を出すと思ったんじゃないかな? あいつ見るからに人間不信そうだったし。それなら僕はパーがグーをだすから、それに負けはしないパーを選んだんじゃないかな?」


 他人の考えてる事はわからないけど、まあそんなとこだろう。


「えーっ! じゃ、ベル達負けるかもしれなかったのかしら?」


「んー、それはないよ。もし違う手を出しても、ギルティ君の光線で痺れさせてパーにするつもりだったし、ま、その必要はなかったけどね」


「あ! ギルティ君!!」


 ベルが叫ぶ。ベルはギルティ君にはやられてばかりなのに心配してるのか?


「大丈夫! 金貨と一緒に拾っといたから」


 僕は収納からギルティ君をだす。けど、牛男の斧は回収できなかった。戦いに犠牲はつきものだ。


「けど、まじ、間一髪だったな。まあ、これで、聖都で僕たちに手を出す馬鹿はいなくなるだろう」


「そうね。平和が一番かしら」


「ベル。どの口がそういう。危険生物のくせに。一番怖かったのはお前の魔法だよ!」


「マリーが、巻き込むからかしら。ま、でも、結果的にはオーライかしら。誰も死人もでてないし。けど、裸に塩は地獄かしら、多分いろんな所ひりひりで腫れるわよ」


 まあ、死人は出てないけど、社会的に死ぬ人は出そうだな。


「そーだな。あの魔法も禁呪確定だな。まじ危険!」


「分かったかしら。それより早く帰ろ。お腹すいたかしら」


 軽いな。絶対わかってないな。けど、いくらベルでもさっきの魔法はそうそう使わないだろう。無差別だから自分も巻き込まれるし。


 早く帰るとするか。僕はベルを背負って、牛男の背中に飛び乗る。


「牛男ごめん走って。グラビティ・ゼロ」


「かしこまりました。ご主人様! けど、背中がやばいです。なにかが当たってます」


 何かって、僕の胸か?


「当ててんだよ!」


「出来るだけ、当たらないようにお願いします。気が散ります」


 なんか牛男可愛いな。なんかラノベとかで女の子が純情男の子をからかう気持ちが解る。これ楽しいよ。


「気にしない。気にしない。牛男ゴー!」


 加速する牛男に僕はしがみつく。牛男は孤児院を目指し走り始めた。



  

   第六章 原始の世界  完




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