第十五話 勝負の行方
「「「野球ーすーるなら! こーいうぐあいにしやしゃんせ!」」」
歌声が、会場を震わせる。僕は動くとはみ出てやばい事になりそうなんで、軽くリズムをとる。
考えろ!
今できることを!
ちゃぶ台返しが頭をよぎるが、まだやれることはある!
「ベルしっかり押さえて!」
「らじゃー、ブラジャーかしら!」
ここで親父ギャグかい!
「「「アウト! セーフ! よよいのよい!」」」
「ドリャーッ!」
僕はデブ野郎に目潰しをかます!
デブ野郎は咄嗟に手で顔を庇う。
ちなみに目潰しは寸止めだ! あてる気はない! デブの手は防衛本能で開いている。
パーだ!
「おおーっと! 聖女マリー! 聖女にあるまじき行為! なんて卑怯! なんて狡猾! なんて大きい乳なんでしょう! でも負けは負け! 全くもって見たくはないけど! ルドラ! パンいちです!」
「「「ブーブーブーブーブーブー!」」」
ブーイングが収まらない。まあ、そりゃそうだよな。なんか物も飛んできてる。暴動が起きそうなんで、僕はアナウンサーを手招きしてからマイク受け取る。
「皆さん! 確かに今の行為は褒められたものではありません。ですが、これは真剣勝負です。勝負に綺麗も汚いもありません。もっとも、ルドラさんの体は、目も当てられないほど汚いですが……これはフェイントの目潰しくらいで、集中力を失ったルドラさんの落ち度ではないでしょうか。私はこういう状況でも集中しております!」
僕は両手を上げてアピールする! 色気と勢いで誤魔化してやる。ベルの押さえる手に力がはいる。皆の視線が僕の胸に集まる。少し恥ずかしいが、クレイジー仮面に比べたら百倍ましだ!
ルドラは、納得いかないような顔で服を脱ぐ。そのアクション自体が汚ならしい。
「泣いても、笑っても、次で勝負が決まります!」
僕はマイクで声を張る。ギャラリーが静まるまで僕は待つ。
水を打ったかのような静けさが辺りを包み込む。
ゆっくりと僕は口を開く。
「私は宣言します。この勝利への足がかりを作ったチョキを出すと!」
「「「オオオオオオーーーーーッ!」」」
会場がどよめく。まるで雷鳴のような群衆の叫びと、足踏みが会場を揺るがす。圧倒されそうな熱狂に包まれる。
僕はアナウンサーにマイクを返す。
「おおっと! 聖女マリー! チョキ宣言だ! ルドラはこれをどう読むのでしょうか?」
「フッ、出来るものか」
ルドラが口の端を歪めて、ぼそっと呟く。
「ポンポン、ポポンポ、ポポン、ポポン♪」
叩きつけるようなピアノの前奏が響く。
ラストバトルだ!
「「「野球ー」」」
僕は、胸がこぼれないように、軽く音楽にのる。
「「「すーるなら」」」
ベル! 音に合わせて揉むのはやめて!
「「「こういうぐあいに」」」
ルドラの踊りは汚なすぎ!
「「「しやしゃんせー」」」
全ての目が僕たちを見ている。
「「「アウト」」」
地下アイドルになった気分だ!
「「「セーフ!」」」
絶対勝つ!
「「「よよいのよい!」」」
当然僕はチョキ!
ルドラは……
パーだ!!!!
「おっしゃー!」
僕は右手を高々と上げる!
「聖女マリー! 勝利ーーーーーッ!!」
会場は熱狂に包まれて、ルドラの方にはいろんなものが飛んでくる。
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