第一話 約束の寺院へ
「じゃ、またね。助かったわ、ありがとう」
モミは、僕たちに別れを告げると、馬車を降りて、大通りを歩いて人混みに消えて行った。少し寂しいけど、また、すぐに会えるだろう。
今僕たちは、ゲートの先の大通りにいる。ずっと先にはアーチ状の建物が見える。凱旋門だ。懐かしいな。
ここには、王城だけでなく、キラが所属してた最強のクラン『セイクリッド・マローダー』の本部がある。あと、大陸の冒険者ギルドの本部もある。政治、文化、芸術、全てのものが集まっている。要はこの世界の中心のうちの1つだ。
「帰ってきたな……」
僕は辺りを見渡す。とは言ってもここに居たのは数カ月前。それより前は山の中に住んでいた。
まずは宿を探そう。通行人に馬車OKの宿について聞く。おっさんだったけど、僕の胸ばかりみてやがった! いたしかたない。
さっき聞いた大通り沿いの宿について、馬車を預け、とりあえず宿のレストランで昼食を取る。パンとスープを食べたけどなかなかだった。
まず、するべき事は、アルスの用事を済ませる事だ。ずっと心にひっかかっている。
サンマルコ寺院と言う所のシスターにネックレスと袋を渡す事だ。
宿の従業員にサンマルコ寺院の場所を聞くが、あまりいい顔をされなかった。
「若い女の子のいくとこじゃないよ」
駄目出しされるが、牛男を指差す。
「強力なボディガードいますから」
「牛の獣人か、珍しいな。強いのか?」
「多分、この街で5本の指に入ると思いますわ」
僕はドヤる。けど事実のはずだ。この街には沢山の冒険者、傭兵、騎士などもいるが、牛男に敵う者はほぼ居ないだろう。
「そうか、じゃ、安心だな」
従業員のにーちゃんは信じて無さそうだが、寺院への地図を書いてくれた。む、わかりにくい。道くねくねだ。目印は書いてある。
「気をつけてな」
にーちゃんの視線は僕の胸だ……
「ありがとう」
僕は礼をいうと、宿を後にして大通りを歩き始めた。牛男とベルと手を繋いで。
「牛男、これ持っとけ!」
僕は収納から牛男スペシャル斧を取り出して牛男に渡す。僕は重力操作で簡単に持てるが、常人では両手でも持ち上げられない。謎の超重量金属で出来ている。
何故牛男を武装させたかと言うと、なんか進むにつれ、治安悪そうな感じになってきたからだ。教えて貰った道を行ってると、城壁の門についた。やたら武装した兵士が守ってたけど、冒険者の認識票を出すとすんなり通れた。
その外にも街は続いていて、サンマルコ寺院へ近づくにつれて、なんかどんどん汚くかつ、顔に品性のない人が増えて来た。なんて言うか、スラムっぽい。
僕とベルは仮面を付ける。
きったねーおっさんに口笛吹かれたり、チンピラのようなにーちゃんにジロジロ眺められたり、正直気持ち悪い。マスクはハロウィンとかで付ける、目のまわりと鼻が隠れる幅の広い眼鏡のようなのだ。
これで、若干はましになった。牛男が睨むと誰もが身をすくめる。それによく見ると、牛男の首には鋼鉄の冒険者認識票が光ってる。いつの間に抜け駆けした?
ちなみに、冒険者認識票は、下から、木、石、皮、銅、鋼鉄、銀、金、白金があり、普段見かけるのは、銀が最高位で、金とか白金とかは、ほぼほぼ、お話とかでしかお目にかかれない。だから、黄金認識票3人娘は、レア中のレアだったのだ。
「牛男、いつの間にランク上げたんだ?」
「申し訳ございません、恥ずかしい限りです。ダイエットしながら依頼をこなしてたのですが、せめて銀くらいになってからお見せしたかったのですが……」
牛男がしゅんとしてる。少しかわいい。
戦闘能力でいえば、今の牛男は白金はあるだろう。黄金3人を鎧袖一触の猛者だから。けど、4ランクを2週間で上げてるのは凄い。僕、マリーは未だに木なのに……
「ベルのも見せてあげるかしら!」
ベルも認識票を出す。なんと銅だ!
僕はショックで、しばらく口を聞けなかった……
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