第十三話 蹂躙(じゅうりん)
「じゃ、そろそろ行くか」
まるで主婦が買い物にでも行くかのような気軽さで、アナは立ち上がり歩き始める。
「大丈夫? マリーちゃん」
サリーが僕の手を引いて起き上がらせる。こいつも力強すぎだろ。ああ、膝枕が……
サリーに手を引かれついて行く。
「鎧着装!」
モモさんの声に振り返ると、そこには大剣を持った黒騎士がいた。ギャップあり過ぎだろ。
「マリーちゃん、モモはああなったら雰囲気をこわさないように話さないけど、気にしないでね」
「わかった」
そうだな、ごつい黒騎士が女の子の声を出したらなんか弱そうだしな。
「私たちはクラン『サクリファイス・ビクター』の者だ。苦戦してるようだが加勢しようか?」
アナが大声で宣う。こう見るとまともな人間に見える。
「引っ込んでろ、クソ共が、これは俺たちの獲物だ手をだすな!」
ジェフはなんとかタイタンの攻撃をいなしている。
「そうよ、こんな奴わたくし達だけで十分よ」
イリアが杖でタイタンを叩く。乾いた音がするだけで全く効いてない様に見える。
「その通り、まだやれる、猛れ剛槌ウロボロス!」
ヘルメの手にしている蛇の絡まった装飾のあるメイスから光の大蛇が生み出されタイタンに噛みつく。けど、表面を軽く削っただけだ。そして、光はタイタンに吸い込まれて行った。ヘルメこんな必殺技隠し持ってたのか! 格好いいけど、見かけ倒しだな。
「なに! 効かない」
驚愕して硬直したヘルメにタイタンの腕が伸びる。一瞬にしてヘルメが消える。遙か遠くまでタイタンの拳でぶっ飛ばされた。多分死んだな。これは生きてても瀕死だろう。自業自得だ。
「へ、ヘルメ……」
イリアの口から驚愕の声が漏れる。明らかに動きがよくなったタイタンが両手でイリアを掴む。
バキ! ゴキゴキ!
「うぼぅ!」
イリアがその高貴な顔に似合わない愉快な声をあげて、口から血を吐き出す。これは骨ぐちゃぐちゃだろう。ご愁傷様だ。タイタンはそのゴミを投げ捨てる。
「この! くそスカ○ロ野郎が!」
ジェフがタイタンに汚い言葉を放ちながら斬りつける。彼の中では、う○こ、くそ、ス○トロの順番で罵倒語は進化するらしい。きったないな! 奴と同じく。
「さっきの蛇の魔法、土属性だったみたいね、タイタンが吸収して元気になってるわ」
そうだったのか、サリーが解説してくれる。わざわざ敵に塩送ったようなものか。ヘルメって頭悪すぎだろ。
「がっ!」
タイタンがジェフにジャブを放ちチョップで床に叩きつけ踏みつける。見た目に寄らず、デカイのに器用だ。
バキバキッ!
骨が折れる嫌な音がする。
「ウガガガガガガッ!」
ジェフがジタバタする。あいつはカスだけど、少し可哀想な気もする。
「神よ! 助けてくれ!」
ジェフがこっちを見て哀願してる。節操のない奴だな。
「しょうがないな。行くか」
アナはバイザーを下げ槍を手にする。え、助けるのか?
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