第十五話 出発
「それは、私たちに言ってるのかな?」
牛男がずいと前に出る。モヒカンより頭2つ分くらいデカイ。
「変なかぶり物しやがって、お前ら、このでくのぼうを血祭りにあげちまえ!」
モヒカンたちが牛男を囲む。鬨の声を上げて、牛男に襲いかかる。めいめいの武器で牛男を攻撃する。剣が、槍が、斧が牛男に命中する。牛男は微動だにしない。
「ハァハァ。なんだこいつ?」
モヒカンたちは、疲れ果ててか、攻撃を止める。
「次はこちらの番だな」
牛男は巨大な斧を振り上げる。その腹で、モヒカンたちを殴る殴る殴る。一瞬で全員吹っ飛ばされ、リーダーモヒカン1人になる。
「服がぼろぼろだな。弁償してもらえないかな?」
牛男はじっとリーダーを見る。
「はっ! はいっ! 今すぐにっ!」
リーダーは荷馬車の中から服を持ってきて、牛男に差し出す。
「馬鹿がっ! 死にさらせっ!」
ガキッ。
リーダーは服に隠しもってたと思われるダガーで牛男を突き刺す。けど、刃が突き刺さらない。
「だ、旦那、他に欲しいものはありやせんか?」
ゴン!
牛男は一撃でリーダーの意識を刈り取った。殺してはいないだろう。
モヒカンたちは、小金貨にして50枚ほど持っていた。しけてんな。まあ、金が無いから追いはぎとかしてるんだと思うが。コイツらは中々の実力者だと思われるので良い値段で引き取って貰えるだろう。全員ふん縛って馬車に積み、一旦町に戻る。
モヒカンたちを衛兵に引き渡し、接収した馬車は二台売って、一番綺麗な奴は貰うことにした。基本的に盗賊から接収したものはいただいてもいい。
あと、衛兵に盗賊を引き渡すと、報奨金がクオリティに準じて貰え、彼らはこれまでやって来た事に応じて処罰される。かなり凶悪な事をしてない限り、肉体労働奴隷にほぼなるらしい。モヒカンと馬車で、さらに小金貨30枚ほど稼ぎ、次は馬車で出発する。
「待ってー、あたしも連れてってー!」
出発しようとした僕らの所に駆け寄る女性。
彼女はフードを外す。尖った耳に端正な顔、モミだ。
「なんだお前。夜逃げか?」
僕は一瞥もせず、馬車に乗ろうとする。こいつとは関わりたくない。顔とスタイルはいいけど、頭の中には多分スライムかナニかが詰まってる。素面の時はまだましだが、お酒を飲むと基本的にパンツを脱ぐ変態だ。酒乱なのに、気が付いたら酒を飲んでる。しょうも無い奴だ。
「あんたたち、聖都に行くんでしょ! あたしも異動になったの!」
問答無用で馬車に乗り込んでくる。馬車の荷台には、先に牛男が乗っていて、御者はベルだ。
「お前、何をした? 左遷だろ」
僕は目を合わせないようにして言う。こいつは戦闘狂だ、猿と一緒で目が合ったら襲いかかってくる。
「何言ってんのよ! 出世よ、あんた達がばんばんワイバーン持って来たり、古代のゴーレムの魔石たくさん持ってきたりとかで、担当のあたしの職位が上がったのよ!」
そう言うとモミの姿が消えた!
「ヒヤッ!」
僕は悲鳴を上げる。僕の胸にひんやりとしたものが触れる。
「じゃ、聖都までよろしくね!」
僕の耳元でモミが囁く。僕の後ろに回ったモミが僕の胸に手を滑り込ませている。
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