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 第十三話 決闘


 町に戻り、サリーのいないサリーの部屋に泊まり、次の日なんとなくギルドに向かった。牛男とベルとコーヒーを飲みながらテーブルに座ってると、他の冒険者からどよめきの声があがった。買い取りカウンターの所に人垣ができている。山のように積まれた素材。ほう、どんな奴だ?



「素材の買い取りを頼む」



 なんか聞いた事のある声だ。僕は立ち上がり野次馬に参加する。


 長身で面長のまるで狼みたいな男。ジェフだ。聖都最強と言われているクラン『セイクリッド・マローダー』の双剣使いだ。


 僕の因縁のクソ野郎だ。顔を見ただけで不快な思いになる。

 聖都に帰ったのかと思ったら、まだこの町にいやがったのか。本格的な復讐は聖都でと思っていたが、これも何かの縁、すこしからかってやるか。


「おう、うんこジェフ元気か?」


 人垣の後ろから声をかける。


「誰だぁ、このジェフ様をうんこ呼ばわりしたのは!」


 回りの者が怖じ気づくような殺気バリバリの大声を出してくる。うっせーな。


 ジェフは耳がいい。特に自分への悪口はよく聞こえるみたいだ。


 人混みをかき分けて、ジェフが僕の前に来る。巻き添えを恐れてか人混みが潮が低かったかのように別れていく。おっ、イリアとヘルメも横にいるな。


「なんだぁ、お前は牛乳うしちちじゃねーか」


 ガッ!


 僕の横で牛男がイリアの杖を掴む。イリアは問答無用で僕を杖で殴りかかってきやがった。牛男は今はスピードに難ありなので、いつも僕のすぐそばにいる。デブでも牛男は牛男。イリア如きに遅れは取らない。


「小娘、わたくしは生まれてこのかた、あんな屈辱を味わったのは初めてですわ」


 イリアが腰に手を当てて僕の前に仁王立ちする。おお、スタンダード悪役令嬢ポーズだ。


「マリー、なにこの猿みたいな乱暴な娘は、屈辱ってなにしたのかしら」


 ベルが僕の手をクイクイ引っ張る。


「あ、こいつね、アナにかんちょーされて、うんこ漏らしたんだ」


「「漏らしてないわ!」」


 イリアとヘルメがハモる。ヘルメもむきになるって事はヘルメも漏らしたのか。きったねーな。残念な奴らだ。


「そっか、ヘルメも漏らしたのか、お前らおむつがいるんじゃないか?」


 ヘルメの顔が真っ赤になる。やっぱり漏らしたんだな。


「きったない奴らかしら。犬や猫とか動物でも賢いのはトイレするのに」


 ベルが更に挑発する。


「きいいいいっ! 許さない! 子豚! ぶっ殺す!」


 あ、イリアが壊れた……


「お前にも同じ苦しみ味あわせてやる!」


 ヘルメは杖を強く握りしめてる。やる気だな。


「決闘場に来い! 3対3だついてこい」


 ジェフは顔が真っ赤だ。恥ずかしいのか? 怒ってるのか?


 僕達はギルドの決闘場に向かう。冒険者ギルドには決闘場が併設されている。冒険者同士のトラブルが発生したとき、話し合いで決着がつかないときには決闘が行われる。決闘場には完全結界が施されていて、あと高度な回復魔道具と回復薬が準備してあり、ほとんどの怪我は治癒出来るようになっている。それらが使われたときには割り増し料金を請求され、ギルドが若干儲かるようになっている。当然使用料もとられる。


 決闘場は周りから丸見えなので、その一部始終は世間に知れ渡る事になる。うってつけの舞台だ。


「生まれて来た事を後悔させてやるぜ」


 威勢よく中に入るジェフについていく。  



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 



「ま、満腹だ……」


 ジェフはセイウチみたいに床に寝っ転がっている。毛の生えたきったねー腹が服を破って突き出ている。



「公開処刑完了!」



 僕達は踵をかえす。


「わ、わたくしのナイスプロポーションが…」


 イリアは胸を隠して女の子座りをしている。目鼻だちがはっきりしてるから、デブでも可愛らしい。


「巨乳! 巨乳!」


 ヘルメは自分の胸をおさえてトリップしている。


 肥満でほぼ全裸の三人を置いて、僕達は決闘場を後にした。こいつらもしばらくは大人しくなる事だろう。



 読んでいただきありがとうございます。


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